マツダの新型「CX-5」はなぜ値上げしないのか 強豪ひしめくSUV市場、マツダ流の戦略は?

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今回の刷新でマツダの戦略が透けて見えるのが価格だ。エンジンは初代と同じとはいえ、最新の技術を投入したため、価格が上がると思われたが、実際はほぼ据え置きにとどめ、モデルによっては値下げしたものすらある。

ガソリン車の最安値モデルは約246.2万円でわずか16,200円の値上げとなっている。ディーゼル車の最上級モデルは約352.6万円で37,800円、率にしてわずか1%の値上げにとどめた。ディーゼル車のエントリーモデルは約277.5万円で約59,000円、率にして2%値下げした。

台頭するライバルとどう戦うのか?

新型CX-5を見た人からは「色が良い」の声が上がった(記者撮影)

初代CX-5は2015年1月に商品改良を行った際に、国内向けは1割程度値上げしたが販売台数への影響は見られず、その後もコンスタントに月間2,000~3,000台を販売してきた。

今回投入した2代目の場合、国内の月間販売目標は初代よりも2割引き上げ2,400台に設定。小飼社長は「国内販売目標をはるかに超えた達成を国内営業や販売店と一緒に確実にしたい」と意気込む。

だが、ライバルは確実に増えている。国内のSUVでは、ホンダの「ヴェゼル」が2014年度から2年連続で首位を維持する一方、トヨタ自動車が今年12月14日に「C-HR」を投入。欧州メーカーもこぞってSUVのラインナップ拡充に動いている。

いくら初代CX-5が販売好調だったとはいえ、いたずらに価格を引き上げることには慎重にならざるをえない。国内営業を担当する福原和幸常務執行役員は「お客さんが購入する中心の価格帯は外せない」と価格競争力を意識したことを認める。

実際に価格を据え置ける企業環境も整ったことも大きい。マツダは新世代商品群の展開に合わせ、小型車や中型車、SUVといったセグメントを超え、概ね5年分を一括りにして、車全体や部品を企画する開発手法「一括企画」を採用。車種間で構造や部品設計に共通性を持たせているため、設計開発や生産の効率が上がり、新しい技術や部品によるコスト増を吸収することができるようになった。言うならば、「企業努力」の賜物だ。

もう一つはプライシング(値付け)の精度が上がったことである。新世代商品群が投入される以前のマツダは、メーカーから販売店に出される販売奨励金を原資にした値引き販売が常態化していた。値引きされて販売された車は下取り価格(残価)も低く、マツダ車ユーザーはマツダ車しか乗り換えられない。この悪循環は「マツダ地獄」と揶揄され、顧客満足度の低下に繋がっていた。

小飼社長は「CX-5刷新では現行車ユーザーの声を多数反映させた」と話す
(撮影:梅谷秀司)

マツダは新世代商品群投入を機に、商品の価格ではなく、価値を訴求する販売に転換。販売奨励金も絞り、極力値引きをしないことにした。以前は値引きが前提だったために価格に意味はないに等しい状況だったが、「今はつけた価格に意味があり、価格がとても大事になった」(福原常務)のである。

マツダは新型のCX-5では、現行車やアクセラなど新世代商品群で拡大したマツダユーザーからの買い替え需要に重点を置く。その上で他社ユーザーの取り込みも果敢に狙う考えだ。どちらを狙うにしても強豪ひしめくSUV市場の中では競争力のある価格は重要な武器となる。

「価格以上の商品価値がある」と思わせて消費者を振り向かせることができるかどうか、新型CX-5の売れ行きに注目が集まる。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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