デジタル広告収益、「2強が総取り」は本当か グーグルとフェイスブックが圧倒的?
デジタル・コンテンツ・ネクストもまた、アメリカの広告業界の成長のほぼすべてをグーグルとフェイスブックが吸い取っていると主張。同社の調査によると、2016年前半は、グーグルとフェイスブックを除くと、業界は平均して縮小を見せたとなっている。
ピボタルによる世界規模の調査結果も、アメリカ国内の結果と似ていると、同社のワイザー氏は指摘。ゼニス・メディアは、2016年の統計はまだ発表できるものが無いものの、2015年の全世界におけるデジタル広告の成長分のうち、81%がフェイスブックとグーグルの取り分だったと語った。
マグナ・グローバルも2016年前半は、世界規模で見ても、業界で平均して数%の減少を見せたと発表。これはデジタル・コンテンツ・ネクストの調査結果と同様だ。マグナによると2016年現在、全世界のデジタル広告マーケットの64%をフェイスブックとグーグルが占有しているという。
ロングテール問題
こういった数字に違いが生まれてしまうのは、デジタル広告マーケットの大きさを測るのに、異なる手法をそれぞれが使っていることにある。多くのリサーチャーは、アメリカのオンライン広告の業界団体インタラクティブ広告協議会(IAB)の数字をもとに、広告費の推計を出している。
IABの調査は、PwCによって請け負われている。しかし、この調査もほかの調査と同様に、あらゆるインターネット企業を捉えられているわけではないのだ(オハイオ州でヒラリー・クリントン大統領候補が大差で勝つと示した調査があったのも記憶に新しい)。
直近の調査でPwCは、調査に参加しなかった会社については「利用可能なパブリックな情報にもとづいて、控えめな収益推計を出している」と述べている。こういった注意深い態度は、調査結果が膨れ上がるのを防ぐ一方で、公開されている数字ばかりが強調される危険性もある。PwCは、米DIGIDAYのインタビュー申し込みを断わったものの、スポークスパーソンによるとPwCは、バイヤーではなくセラーを調査していると認めた。
「ロングテールは実際にすごく長いものなのだ。そういった文脈では可視化されていない成長の余白は非常に大きい」と、メディアブランド・ソサエティのソーシャル・メディア・エグゼクティブ・ディレクターであるジェームズ・ダグラス氏は言う。
また別のリサーチャーは、「フェイスブックとグーグルの数字を把握するのは簡単だ。彼らは収益を報告しているから、見逃すことは無い。しかし、実際のマーケットはIABの報告書よりも大きいだろう。それを考えると、調査結果は少し小さく見た方が良いかもしれない」と語る。
デジタルメディア企業で、急激に成長しているところも存在するのは確かだ。それを見て「成長は全部、グーグルとフェイスブックにもって行かれている」と、まとめてしまうのは難しい。