会社員ものめり込むラップブーム再来の実状 人気のプロ2人が内側を語り尽くす
――フリースタイル・ラップに興味を持って、引きこもりから脱出したラッパーもいますよね。
ACE:僕もそうだし、GOMESS(静岡県出身のラッパー。自閉症を告白したことで話題を呼んだ)とかもラップと出合って人生が変わったタイプですね。
晋平太:だね。この前も地方でラップ講座をしたら、ずっと引きこもりだった子が勇気を出して遊びにきてくれて。俺も彼のことが気になって、講座の後もずっと携帯で連絡を取り合いながらラップを教えていたんです。そしたら、毎日学校にも行けるようになって。今ではラップの大会に出るようにまでになりました。そういう経験を経て、改めてラップのすごさを実感しましたね。
日本にラップが浸透すれば、もっといい国になる
――2人の話を聞くと、ラップブームはまだまだ白熱しそうです。今後、会社員から若い子にまでラップが浸透した結果、どんなことが起きると思いますか?
晋平太:ラップのいいところは自分の人生を肯定できるようになるところだと思います。
例えば、ACEの場合、ブラジル人で日本に来ていじめられっ子だった背景があるよね。でも、MCバトルでは、そういった自分しか持ち得ない経歴や経験がラッパーとしての持ち味になる。つまり自分のネガティブな部分をポジティブな言葉や文脈に転化させることができればバトルも盛り上がるんです。それが出来たら、自分にもっと自信が持てるようになるじゃないですか。
ACE:そこもラップのおもしろいところですよね。
晋平太:デカい目標ですけど、そうやってラップを通じて自分を肯定できる人が増えたら、世の中がもっとよくなる気がするんです。
ACE:小学校や中学校にもラップが広まってほしい。例えば、授業の科目としてラップがあれば、楽しいだけじゃなく、日本語能力や語彙力を高めることができる。休み時間や放課後にサイファー(円陣を組んで勝ち負けを競わずにラップを楽しむこと)をやれば、まわりともコミュニケーションを取りやすくなる。あとけんかとかになっても、ラップで勝負をつければいいから平和的ですよ(笑)
まじめなことを言うと、言葉を扱うラップも文学であり芸術であると僕は思っています。自分が普段考えていることや感情、思想などをビートに乗せて、韻を踏むのがラップ。これを繰り返せば、生きるための頭の回転も早くなるし、視野ももっと広くなると思う。みんながそれにのめり込めば、20年後、30年後の日本はもっとすごい国になっているんじゃないかなと期待しています。
晋平太:もし欠点を挙げるとしたら、言葉を使った遊びだから人を傷つける可能性もあることかな。
ACE:ただ社会に出たら、誰しも納得しがたいことを言われて、傷ついてしまう機会があるじゃないですか。若いうちにラップをやっておけば、早めにその耐性はつく気がします。
晋平太:タフになれるよね。MCバトルで受けた発言をきっかけに自分を客観視することもできるから。
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