常磐線復旧は「移転後の街」を活性化するか 相馬と仙台が鉄道で再びつながった

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7月の小高-原ノ町間の運転再開の際に執筆したレポートでは、「原ノ町-仙台間に快速など、何らかの速達列車ができればよいと思う」と書いた。所要時間短縮は、営業運転再開区間に限らず、相馬、原ノ町方面と仙台との間の大きな利便性向上につながるからだ。

同じく津波の被害を受け、長期運休を余儀なくされた仙石線の高城町-石巻間には、東北本線との接続線を建設してまで、仙台直通の快速(仙石東北ライン)が新たに設定された。人口約14万7000人で、宮城県第2の都市である石巻ほど大きな市は常磐線沿線にはない。相馬市の人口は約3万6000人、南相馬市は約5万7000人に留まる。

だが、「震災前と同じ」では、地域の魅力向上にはつながらない。ただでさえ「被災地」との印象が残る地域なのだ。

「一線スルー」構造は特急運転への布石?

山下を発車する仙台行き。分岐器の片方が直線状の「一線スルー構造」となっている

今回、快速などの設定はかなわなかったが、広域的な視点から、今後の検討課題としてもらいたいところだ。以前の特急の代替ということでよい。

列車の行き違いが可能な、新地、山下の両駅では、分岐ポイントが「一線スルー」構造となっていたのにも気がついた。これは単線が2本の線路に分かれるうちの1線を直線状にして、分岐器における速度制限を受けることなく駅を通過できるようにした構造だ。列車の高速化には欠かせない設備で、将来の特急などの運転を見据えた施策と受け取れる。早期の活用が望まれる。

また、Suica利用可能エリアは、やはり原ノ町以北に限られ、エリア拡大は行われなかった。磐城太田・小高、および2017年営業運転再開予定の浪江の3駅のみが、利用できない駅として浮いたままである。

現在、首都圏のSuica利用可能エリアがいわきまで広がっており、原ノ町までの仙台エリアを拡大すると、常磐線全線復旧後につながってしまう(Suicaは同一エリア内の駅相互間でのみ利用可能)ことを考慮しているのかもしれない。だが、今後、帰還事業が進められる地域でもある。利用客の利便性向上には積極的であってほしい。

(写真はすべて筆者撮影)

土屋 武之 鉄道ジャーナリスト

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つちや たけゆき / Takeyuki Tsuchiya

1965年生まれ。『鉄道ジャーナル』のルポを毎号担当。震災被害を受けた鉄道の取材も精力的に行う。著書に『鉄道の未来予想図』『きっぷのルール ハンドブック』など。

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