JR西日本の「ベンチャー投資」は成功できるか 保守的な社風の打破に向け、投資候補は100超
JR西日本でCVC構想が持ち上がったのはおよそ1年前にさかのぼる。「地域の活性化に貢献するために新しいアイデアや優れた技術・ノウハウを持つベンチャー企業のみなさまと連携していきたい」と来島達夫社長はベンチャー事業に注力する理由を語る。
JR西日本のベンチャー投資の指南役は元産業再生機構COOの冨山和彦氏が立ち上げたコンサルティング会社「経営共創基盤(IGPI)」。「ベンチャー企業の見方やベンチャー企業の情報をIGPIから教えてもらっているうちに、自らCVCを設立して投資してはどうかという発想が出てきた」と、JR西日本イノベーションズの社長に就任した奥田英雄氏が語る。奥田氏は銀行に出向した経験があるほか、不動産鑑定士の資格を持つ。鉄道マンとしては異色だが、ベンチャー会社の社長としてはうってつけの存在だ。
今回設立された新会社は投資先として3つの重点分野を掲げている。特に期待が大きいのは新規事業。カキ養殖のほかにもJR西日本はサバの養殖、地域産品のネット販売、農業の国際規格取得支援といったビジネスも進めてきた。今後このような事業は本社に代わって新会社が受け持つことになる。
案件は100を超える
第2の重点分野はショッピングセンター、コンビニ、ホテル、カードといった、JR西日本の非鉄道事業とシナジー効果が発揮できそうな分野への投資だ。たとえば流通・SC・旅行などの利用拡大に向けた情報提供アプリの開発といった事業を想定しているようだ。
3つ目の重点領域は鉄道サービスの向上、鉄道事業運営の効率化、省力化に向けた技術、ノウハウへの出資である。たとえば旅客流動分析へのAIの活用、清掃業務におけるロボットの活用といったものだ。ただ、「鉄道事業の根幹である安全に関する事業だけは本社で検討する」(奥田社長)。3つの重点分野に濃淡はつけず、それぞれに力を入れていくが、「新事業への取り組みがスムーズに進みやすいのではないか」と奥田社長は考えている。
新会社はまずJR西日本が検討してきた100を超える案件を引き継ぐ形でスタートする。その後は徐々に独自でベンチャー企業を開拓していくという。ただ、いきなり経営権を取るような出資は行なわず、まずは20%程度のマイナー出資から始めて、モノになりそうとわかった段階で50%、100%へと出資比率を引き上げていく。何社に投資するといった方針は決めていないが、4~5年かけて累計投資額を30億円まで拡大していきたいという。
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