JR西日本の「ベンチャー投資」は成功できるか 保守的な社風の打破に向け、投資候補は100超
今年に入って西日本旅客鉄道(JR西日本)が鉄道以外の事業多角化を急ピッチで展開している。今年6月、広島県の地元業者と組んでカキの養殖事業に参入した。地下海水を使って陸上養殖することでノロウィルスの影響を受けにくく、生で食べられるのが特徴だ。12月13日からは大阪・梅田と東京・新宿で市場調査を兼ねた試験販売を行なっている。
10月には三菱重工業の不動産子会社の株式70%を970億円で取得することを決めた。同社は首都圏を軸に不動産の分譲や賃貸事業を行なっている。これを足掛かりに首都圏での不動産事業を積極化する。
30億円でベンチャー事業に投資
さらに12月1日付でベンチャービジネス事業を行なう「JR西日本イノベーションズ」という会社を設立した。JR西日本が100%出資し、出資枠30億円の中から有望な企業に出資を行なっていく。
JR西日本の手法はコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)と呼ばれる投資スタイルの一つ。よく知られているベンチャーキャピタルという投資スタイルは、複数の投資家から資金を募り有望な企業に投資、将来の上場などによる株式売却益といった金銭的なリターンを目的とした投資を行なう。これに対し、CVCは大企業が資金を出して、自社と事業シナジーが見込めそうなベンチャー企業に出資するというスタイルだ。投資先の事業を自社内に抱え込むこともあり、必ずしも金銭的なリターンを目的としているわけではない。
鉄道事業者によるベンチャー投資は珍しくはない。阪急電鉄はコンサルティング会社と共同で「梅田スタートアップファンド1号」というベンチャーキャピタルを設立しているし、東急電鉄や東京メトロは本体で有望企業発掘の取り組みを行なっている。ただ、CVCを設立して投資をするのは異例だ。少なくともJR各社の中ではJR西日本が初めてだ。
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