「勉強力」が皆無な高校生の、ひどすぎる現実 模範解答を事前に配る「教育困難校」の試験

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言うまでもなく、小学校・中学校でも試験は数多くある。学校では試験範囲を早めに教え、あらかじめ準備勉強をすることを促している。試験前に試験勉強の計画表を作らせ、担任に提出させる学校もある。教育熱心な家庭では、親がその勉強に付き合い、教えることもあるだろう。また、小学校・中学校の試験で得点をアップさせた実績を大々的にPRする学習塾も多く、特に中学生では定期試験前に、まるで上級学校の受験本番でもあるかのようにみっちりと勉強させる塾が保護者から人気を集める。このような経験を経て、試験に向けた勉強のスタイルは、高校生になるまでにおのずと身に付くはずだと考えられている。

だが、「教育困難校」に通う生徒たちには、小学生の頃から親と一緒に勉強したり、試験の結果を確認して、わからない点を理解できるように教えてもらった経験がない。生活に余裕のない親は、子どもが試験で悪い点を取っても、「だめじゃない」とか「次に頑張ればいいから」といった言葉をかけるだけである。もちろん、費用のかかる学習塾に通わせることもできない。当然ながら、子どもたちは勉強がわからず試験ができないということになる。学校でも家庭でも、できないところの手当てをしてもらえないため、勉強に苦手意識を持つようになるのだ。

苦手なことを克服する発想は皆無

「苦手なものを克服しよう」と努力できる人は、自己肯定感の強い、自分を頼む気持ちを持てる人だけだ。親からも手をかけられず、自己肯定感の低い子どもたちは、苦手なものから逃げて、それは大して価値のないものと思い込んで、自分を守ろうとする。かくして、勉強や試験に価値を置かない子どもたちが出来上がる。

小学校・中学校であまり学ぶことなく「教育困難校」に進学した生徒たちだが、彼らも定期試験で欠点、つまり赤点は取りたくない。その後の補習や追試験が面倒だし、場合によってはバイトのシフトを変えなければならないからだ。サービス業でバイトをしている生徒が多く、12月は雇用主にとってもバイト生にとっても書き入れ時で、放課後は目いっぱいバイトのシフトを入れている。そのため、生徒たちは赤点にならないスレスレのライン、20点台後半程度の得点はしたいと考えているのだ。そして、教師も生徒の追加指導に無駄な労力を使いたくないと、内心は思っている。

その両者の利害が一致したのが、「教育困難校」独特の慣習である「試験対策プリント」の存在だ。定期試験で出る内容をほぼ網羅した手作りプリントを生徒に配布するのである。試験前の授業で解答を説明するのはまだ良心的な教師で、試験前でも普段と変わらない生徒の状態に手間取って時間が足りなくなり、模範解答を配布するだけの教師もいる。そして、定期試験では「試験対策プリント」にある問題が、そのまま出題される。試験で求められることは問題の解答を考えることではなく、いかに「試験対策プリント」を覚えたかということなのだ。

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