貧困に陥った若者が、「下流老人」になる未来 生活保護受給者の爆発的増加は避けられない

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東京都23区の生活保護基準額は、生活扶助費と住宅扶助費(上限額)を合計して、約14万円程度(単身世帯の場合)である。その場合、福祉事務所が継続的に生活保護を必要としなくなるための水準(生活保護自立水準=生活扶助基準+住宅扶助特別基準+基礎控除100%)だと想定しているのは、約17万円強である(2014年時点)。

この基準に医療費や各種税金、保険料などの減免も入れれば、東京都23区内において、ひとりで健康で文化的な生活を送るためには、20万円程度必要であることが理解できる。年収にすると、ひとり暮らしの場合、240万円程度は手取りとして必要な金額と言えよう。年収が平均程度の会社員でも、老後の年金水準では、都内23区に住み続けることが困難な指標だ。だから、正社員にはなれなかった若者たちが年老いたときに、現在同様、年金以外のセーフティネットが整っていないなら、生活保護でしか生活を維持できない世帯は明らかに増えるだろう。

「子育てはぜいたく」というのが、貧困世代の本音

『貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち』(上の書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

2016年1月1日付朝日新聞のオピニオン欄で、わたしは「非正規雇用、年金問題などで将来に不安を抱える若い世代には、結婚して子どもを産むという当たり前のことさえ、ぜいたくになってしまっています」と述べた。それは何も誇張ではない。

少子化問題を貧困問題とセットで考えることなく、結婚・出産しない若い世代だけのせいにしてしまう中高年の方々が、残念ながらまだ多いように思う。実際、2016年1月には、千葉県浦安市の成人式で、市長が「人口減少のままで今の日本の社会は成り立たない。若い皆さんにおおいに期待をしたい」と発言した。しかし、期待をする以前に大事なことは、若者たちの現状に対する、豊かな想像力だ。

大人たちには、子どもを産みたくても産んで育てるほどのゆとりがない若者たちの姿が見えていない。子育てはぜいたくというのが、貧困世代のホンネである。

ましてや、貯蓄などの資産形成もできない。そんな多くの若者たちは生活保護受給者予備軍であり、下流老人予備軍であり、それは相当に分厚い層をすでに形成している。

貧困世代を放置すれば、近い将来、社会保障や社会福祉の対象として厳然と現れてくるだろう。いまから手を打てる限り、打っておくべきだというのが、社会福祉の専門家であるわたしの立場である。

藤田 孝典 NPO法人ほっとプラス代表理事

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ふじた たかのり / Fujita Takanori

1982年生まれ。埼玉県在住の社会福祉士。ルーテル学院大学大学院総合人間学研究科博士前期課程修了。NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学客員准教授(公的扶助論、相談援助技術論など)。反貧困ネットワーク埼玉代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。厚生労働省社会保障審議会特別部会委員(2013年度)。著書に、『ひとりも殺させない』(堀之内出版)、『下流老人――一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新聞出版)、『貧困世代――社会の監獄に閉じ込められた若者たち』(講談社)などがある。
 

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