崖っぷち女がスマート紳士に瞬殺されたワケ 東京カレンダー「崖っぷち結婚相談所」<18>
思わず、みとれてしまう
――爽やかの塊みたいな人だわ……。
杏子は4回目のマッチング相手である松岡に、完全に見惚れてしまった。
「杏子さんは、お仕事帰りですよね?とりあえず、飲み物でも頼んでください。何にしますか?」
コーヒーを、と杏子が答えると、松岡は手際よくウェイターを呼びつけ、オーダーを済ませてくれた。少し低めのハキハキとよく通る声に、杏子は胸がキュンとときめく。
――相談所で、こんな素敵な人に出会えるなんて……。
1回目のマッチング相手の飯島は悪くなかったが、2回目の正木、そして3回目の桜田は、おそらく「相談所あるある」的な、一風変わった人種であったと思う。
だが、今目の前にいるこの松岡といったら、他の男たちとは比べ物にならない。
何よりもまず、爽やかで清潔感のある外見が目を惹いた。少し浅黒く引き締まった肌は、健康的で男らしい。切れ長の目と白く輝く歯も、大層品が良かった。
話し方や立ち居振る舞いを見ても、彼が常識ある紳士だと思わずにはいられない。
「杏子さん……?大丈夫ですか?」
杏子は声をかけられ、ハッと我に返る。
自分でも気づかぬ間に、杏子は松岡の男にしては美しい手先に、じっと見入っていたのだった。