32歳崖っぷち女を変貌させた婚活戦争の壮絶 東京カレンダー「崖っぷち結婚相談所」<17>
直人を直視することができない
「で?結局、その知樹氏とは、関係は切れていないということで、間違いないですね」
久しぶりに会った婚活アドバイザーの直人は、相変わらず、ドライな口調でカウンセリングを進める。知樹とのイザコザに疲れ果てた杏子が頼った先は、結局、結婚相談所だった。よって、杏子はこれまでの経緯を、事細かに白状させられていた。
恥を忍んで連絡を入れた杏子に、直人は何事もなかったかのように接したが、杏子が相談所を退会すると大口を叩いたことは、完全にスルーされている。
直人の顔は全くの無表情ではあるが、しかし、彼は出来の悪い生徒のような自分に心底呆れ、失望しているに違いない。そう思うと、杏子は恥ずかしさと虚しさで、直人を直視することは出来なかった。
「……かと言って、別に密な関係があるわけじゃないですけど……」
直人は、冷たい目でジロリと杏子を見据えた。猛獣に睨まれた小動物は、恐らくこんな気分になるのではなかろうか。杏子の心は、この直人の前では、丸裸にされているような感覚に陥る。この婚活アドバイザーという結婚のプロに対面すると、いつものように虚勢を張ったり、自分の心に嘘がつけなくなるのだ。
「杏子さん、念のため、もう一度確認します。あなた、結婚がしたいんですよね?」