揺れる32歳女子、「元カレとの一夜」という罠 東京カレンダー「崖っぷち結婚相談所」<14>
人肌の温もりは、圧倒的な癒し効果がある
朝5時過ぎ、杏子が目を覚ますと、隣には知樹が半裸で横たわっていた。
――頭が痛い...。
完全に、二日酔いだった。杏子は、徐々に記憶を取り戻していく。
――そうだ、私、知樹と寝ちゃったんだわ...。
思い返せば、この週末は、疲労の連続だった。陸ガメ男・桜田とのマッチングから始まり、正木に他の女との結婚報告をされ、そして傷心のまま、元彼と一夜過ごしてしまったのだ。
この行動は、果たして正しかったのだろうか。安易に流されてしまっただけではないのか。杏子は自己嫌悪のような感情に襲われる一方で、しかし、安堵感を覚えてもいた。
昨晩、知樹から存分に囁かれた、甘い言葉たち。
「やっぱり、杏子が一番だよ」
「俺に本当に必要なのは、杏子なんだ」
「杏子、好きだよ...」
そんな愛の囁きは、杏子の心の傷と疲れに染み入った。
それに、久しぶりに触れた人肌の温もりは、理屈ではない、圧倒的な癒し効果があった。


















