揺れる32歳女子、「元カレとの一夜」という罠 東京カレンダー「崖っぷち結婚相談所」<14>

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杏子は、ムッとして答えた。直人の物言いは、まるで杏子が騙されているかのように聞こえる。

「そもそも、彼は、本当に杏子さんとヨリを戻したつもりでいるんですか?杏子さん、冷静に、早めに事実確認をして下さい」

「ちょっと......私は、もう相談所は退会するって言ってるんですよ。侮辱のような発言は、もうしないで下さい!とりあえず、退会手続きはお願いしますね。では」

「分かりましたが、今手続きをされても、サービスは来月いっぱい有効です。何かあれば、至急連絡を下さ...」

杏子は苛立ち、直人の言葉が終わる前に電話を切った。

杏子は意気揚々とライバル女にも報告したが・・・

杏子は憤慨していた。

やっと幸せを掴み始めたというのに、直人は、なんと失礼な男だろうか。結局、結婚相談所は、自分に何の益ももたらさなかったではないか。直人に偉そうに口を出される筋合いなど、皆無である。

そこで、スマホが振動した。

――昨日はありがとう。会社には行けた?僕は、眠いです(笑)

知樹からのラインだった。杏子は、ささくれ立った気持ちが、一気に温まるのを感じる。

――そうだ、由香にも報告しなくちゃいけないわ...!

杏子は突如、知樹と杏子の同期の由香が、一時期デートをしていたという事実を思い出した。

由香も以前、杏子にその報告をして来たのだから、杏子もヨリを戻したと報告し返すのが、女の義理というものだろう。杏子は化粧室にてバッチリとコンディションを整え、偶然を装い、由香の部署近くをさり気なく歩いた。

颯爽と歩く杏子に、部署内の男たちは遠慮がちな視線を向ける。杏子は、社内でも有名なセールス美女だからだ。

由香は簡単に見つかった。ふわっとしたベージュのニットに真っ白なタイトスカートを合わせた彼女は、その場にスポットライトでも当てられているかのように、1人目立っていた。

ニットからは艶やかなデコルテラインが絶妙な具合で露出しているが、童顔の彼女に似合わぬそのアンバランス感が、妙な色気を放っている。

しかし、少なくとも知樹にとっては、この女より自分の方が上なのだ。杏子は気持ちが怯まぬよう、背筋をさらにピンと伸ばす。

「あら、杏子。久しぶり。元気?」

由香の横を通りすがると、彼女の方から声を掛けてきた。高く潤った柔らかな由香の声は、人魚の誘惑を思わせる。

「久しぶり、元気よ。あっ、私、由香に話が...」

「そうそう、杏子、聞いてよ。私、知樹くんと会ってるって、前に言ったじゃない?彼、とんでもない人だったわ。やっぱり、杏子って頭が良いのね。早く捨てて正解。あんな人だとは、思わなかった...。」

「え...?」

杏子は、動揺が顔に出てしまわぬよう気を付けながら、由香の言葉の続きを待った。

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