日本に関していえば、フリン氏は日本国内に比較的豊富な人脈を持っている。10月に来日した際には、菅義偉官房長官や、民進党の長島昭久元防衛副大臣など多くの人物と会談し、トランプ氏が大統領になった場合には日本の防衛費の引き上げを強く要求する可能性があることを伝えている。
が、ここへきてフリン氏が経営するコンサルティング会社の最大顧客が、トルコのエルドアン大統領だとする報道が出たことで、ワシントンでの同氏の評判も芳しくなくなってきている。フリン氏は、大統領選挙が行われた8日に政治専門紙「ザ・ヒル」に意見記事を投稿。7月15日にトルコで発生したクーデター未遂の首謀者と見られる米国在住のフェットラー・ギュレン師の身柄引き渡しを求めているエルドアン大統領を支えるべきだと主張した。
トランプ氏の人脈に「日本通」はいない
今後、フリン氏の動向には注意が必要だが、フリン氏を含めてトランプ氏の人脈には、日本や韓国の専門家はいない。現在、トランプ氏の日本に関する「情報源」となっているのは、「日本は米国の防衛費にタダ乗りしながら、貿易交渉では米国を出し抜こうとしている」と主張しているような、愛国主義的な貿易関係者ばかりだ。大統領選中も、トランプ氏は日本を、米国内の製造業の雇用を奪うような貿易関係にある国のひとつとして糾弾。日本と韓国の米軍駐留費についても、両国の経済規模に見合った額を支払うべきと主張していた。
ただし、こうした貿易関係者の関心は近年、もっぱら中国に移っている。トランプ氏の中国戦略のアドバイザー候補として頻繁に名前が挙がるのが、経済学者のピーター・ナヴァロ氏(カリフォルニア大教授)と、選挙戦中にトランプ氏のシニアアドバイザーを務めた、アレキサンダー・グレー氏である。もっとも、情報筋によると、今のところどちらも中国戦略担当に就く可能性は低いようだ。
話を日本に戻す。今のところトランプ氏が日本を含めた外交問題に関する数々の「公約」を実際にどのようにして「政策」に落とし込んでいくのかは不明だ。ただ、ワシントンの日本専門家たちは、トランプ氏が中国や北朝鮮の台頭を押さえ込むためには、日本や韓国との関係を維持することが重要だとの認識を早期に持つようになることを期待している。
安倍首相は、今回の会談によって、大胆な決断ができる政治家であり、日米関係を維持するのに最良の指導者と印象付けたいのかもしれない。環太平洋経済連携協定(TPP)を含む自由貿易の重要性を伝えたいのかもしれない。
しかし、これだけ「お膳立て」がない中での会談だと、安倍首相の思惑通りに事が進むかは、かなり微妙である。
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