ホンネは低金利継続、トランプの対FRB戦略 イエレンFRB議長との対決の日は近い

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海外からの大規模な投資がない限り、アメリカの長期金利の大幅な上昇は避けられないだろう。だが財政赤字が拡大すると、海外の投資家のトランプ政権に対する信頼は失われるだろう。ムーディーズの首席エコノミストのマーク・ザンディ氏は「FRBはインフレを抑えるためには金利を6%以上に引き上げなければならないだろう」と指摘している(『ニューヨーク・タイムズ』2016年11月9日)。

財政拡張に人手不足でコストプッシュインフレ

さらにトランプ次期大統領の移民政策も経済に大きな影響を与えるだろう。トランプ次期大統領は不法移民の強制送還を主張している。不法移民の数は1130万人で、労働人口の5%以上を占めている。仮に短期間に不法移民の強制送還が行われれば、労働者不足の状況が起こる可能性がある。それは当然労働賃金の上昇に結び付く。さらにトランプ次期大統領は最低賃金の引き上げにも同意している。

とすれば、かなり厳しいコスト・プッシュ・インフレが起こる懸念もある。雇用水準で見ると、アメリカ経済は既にほぼ完全雇用の状況にある。そうした中で需要増加、労働供給減は必然的にインフレを引き起こす。

イエレン議長が想定するアメリカ経済とはまったく違った経済状況が出現しそうである。トランプ次期大統領との軋轢が高まる中で、どう金融政策を運営するのか、今までとはまったく新しいゲーム・プランが必要になりそうである。
 

中岡 望 ジャーナリスト

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なかおか・のぞむ / Nozomu Nakaoka

国際基督教大学卒。東洋経済新報社編集委員、米ハーバード大学客員研究員、東洋英和女学院大学教授などを歴任。専攻は米国政治思想、マクロ経済学。著書に『アメリカ保守革命』。

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