ホンネは低金利継続、トランプの対FRB戦略 イエレンFRB議長との対決の日は近い

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政府は金融政策に直接コメントをしないというのがルールであるが、トランプ氏はおそらくそうしたルールにお構いなく政策決定に介入してくると予想される。

新政権は大幅減税、巨額のインフラ投資を政策の柱に掲げている。政権発足直後に議会に法案が提出されるだろう。現在の予想では、共和党は減税とインフラ投資に対して前向きな姿勢を取るとみられる。共和党は両院の過半数を占めているため、富裕層優遇の減税だと批判を強めている民主党の反対を押し切って、法案が可決される可能性が強い。

インフラ投資に関しては民主党内でも支持する議員は多い。減税とインフラ投資で大きな需要が創出されれば、経済成長は高まると予想されている。ただアメリカ経済は既に完全雇用状況に近く、急速な経済成長率の上昇がインフレを誘発することは間違いない。

FRBは2%インフレを目標にしているが、目標を上回るインフレが起こる可能性もある。ムーディーズ・アナリティックスは、トランプ新政権の政策が額面通りに実施されれば2017年の消費者物価指数は2.7%上昇すると予想している。それに伴い政策金利のフェデラル・ファンド金利は現在の0.25~0.5%の目標を大きく超え、2017年に2.0%にまで上昇すると予想している。

トランプの本音は低金利主義、インフレ容認

この予想通りに景気の好循環が進むとすれば、イエレン議長はインフレを抑制するために想定よりも速いスピードで利上げを迫られるだろう。国内経済だけでなく、国際経済への影響にも配慮しながら金融政策を"緩やかに"正常化するというイエレン議長の想定するシナリオは修正を迫られるだろう。

トランプ次期大統領の金融政策に関する考えは必ずしも一貫していない。9月には「過剰な低金利は投資を歪め、資産バブルを生み出す」とイエレン批判を展開している。だが、それはイエレン議長に対する“政治的”批判であり、本音は5月に行われたインタビューでの「自分は低金利主義者だ。金利が上昇すれば、ドルが強くなり、雇用に重大な影響を及ぼす」という発言にある。

筆者は、トランプ氏は不動産で財をなした経済人で本音は低金利主義者で、インフレ容認派だとみている。とすれば、イエレン議長が早期にインフレ抑制的な政策を取ろうとすれば、トランプ氏の反発は避けられないだろう。

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