なぜ若者に「健康オタク」が増えているのか? 「生活者1万人アンケート」からわかった心理

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若者が自身の体に投資をするようになった背景は何か。そのひとつは、将来に過度な期待を持てなくなった若者の価値観変化にある。

今の若者は、物心ついたときからバブル崩壊後の経済停滞期の中で育っており、不景気しか知らない世代である。2000年代に大企業の業績は回復してきたが、国民に景気回復の実感は少なく、それどころかリーマンショック、東日本大震災などの影響を受け、日本経済と若者の雇用状況の悪化を経験してきた。

労働力調査の非正規雇用率を見ても、2015年における学生を除いた15~24歳の非正規雇用率は男性25.3%、女性34.3%であり、全体として3割弱が非正規雇用で働いている。このような雇用不安定な状況に加え、将来の社会保障や年金問題も多々あり、バブル期のような上へ上へと上昇していくイメージを持てなくなっているのだろう。若者の価値観としては、チャレンジしてより良い生活を手に入れる志向よりも、今の自分の生活を大事にする、言わば「足場固め」志向が根付いている。

不安定な世の中で将来も見通せない、頼れるのは自分だけ。若者には、以前から資格取得といった自分の「足場固め」のための自己投資意識が多く見られていた。その「足場固め」志向が体への投資にも向いていると思われる。

従来、健康を重視するのはある程度歳を取ってからが一般的であったが、不安定な世の中で育った若者だからこそ、早いうちから健康の大切さに気づいているのかもしれない。

スマートフォンの普及から考える若者の価値観変化

今ある自分の生活を大事にしたい。そんな「足場固め」の価値観は、「仕事に打ち込んで出世する」よりも、「仕事をしつつ趣味も楽しむ」「友人・恋人・家族との時間を大事にする」「男女平等に家庭を築く」といったワーク・ライフ・バランス志向や人とのつながり志向の上昇からも見てとれる。

特に若者のつながり志向に拍車を掛けているのが、この数年間で急速に普及したスマートフォンの存在だ。「生活者1万人アンケート調査」の調査結果では、2012年における20代のスマートフォン保有率は6割前後であったが、2015年調査では9割以上にまで普及していることがわかった。20代を中心に10代・30代もスマートフォン保有率は8割を超えており、今やほとんどの若者はスマートフォンを持っている。

スマートフォンの利用用途については、やはりSNSによるコミュニケーション利用が多い。LINE、Facebook、TwitterなどのSNSによって、若者の人間関係は大幅に広がっていった。SNSを媒介すれば、新しい人とすぐにつながることができる。

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