「外国人社長を任命したが監視をするのは日本人です」−−出原洋三 日本板硝子会長(次期取締役会議長)

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-- 一方、執行は実務だから能力・経験のある者を適材適所で配置すると。それがチェンバースさん。

いつか日本人に優秀な人が出てきたら、また日本人が社長になるのもいいな、とは思っています。ただし日本人だけ、というのはフェアじゃない。世界から優秀な人を募りながら、そこに日本人を入れていく。それがモラールを上げていくことになるし、日本全体のことを考えてもそれがグローバル化につながる。

もう一つ、日本の経営のよさは従業員一体経営だと思います。欧米の経営というのは、一握りのすばらしく優秀な指導者がリードして組織体を引っ張っていく形が一般的な感じがする。中央集権型なんですね。一方、日本は緩やかな中央集権、地方にも分権している。地方に創意工夫の余地があるわけです。日本人が買収したんだからガバナンスの中で中央集権と地方分権の問題を採り上げる。そういう意味では、監視の視点はいっぱいあるんです。

--地方分権はその国に応じたシステムが必要だし、グローバル経営には中央集権が必要。それらのマトリクスのようなイメージですか。

そう、マトリクスというのがいちばん説明がしやすい。いっぺん横串を地方で通して、上から中央の指令を届かせてマトリクスにしていく。これしかない。中央一本でもダメだし、地方に全部任してもダメだ。

--日本的経営の中で譲れない価値観を確実にグローバル経営に落とし込むためのガバナンス体制だと。新体制の下でもチェンバースさんのボスは出原さんですか。

私や藤本です。CEO(最高経営責任者)はチェンバース。最高責任者ですが、そういいながらガバナンスの網を掛けています。

--ただ情動的な部分で、チェンバースさんを社長に据えることが、どうしてもしっくりこない、という従業員や関係者も多いはずです。

各支店、工場、代理店の人たちに、今お話ししたことを説明して回ってます。私と阿部と藤本の3人でね。大体、皆さん納得してくれます。ただ従業員は当惑もし、心配もしているのは間違いない。英語を話せるわけでもないし、面白くない、というのも事実出てくる。しかし日本板硝子にとって日本はもう全体の中の一部です。日本人だけを優遇し、他国の従業員のモラールが落ちたら困る。

--買収がなかったら日本板硝子はどうなっていたでしょう?

まさに従業員に説明するとき、この買収がなかったら、どうなっていたか、から始めるんです。買収前は2700億円の売り上げ、利益が100億円前後、しかも日本の建築・自動車市場が成熟して業績は伸びない。この状況で本当に生き残れるのか、買収される可能性すらあった。ところが買収することで買収されるのを阻止し、企業価値は一挙に上がり日本板硝子は大きく変わった。

しかし本社は東京です。これは絶対変えません。東証1部上場会社であり、スチュアートも社長になったら1年の半分はここに出勤するわけですから、ここが司令塔であることは間違いない。重要な会議は全部東京、全国から一定以上の管理職を集める会議も前は東京とロンドンでやってましたが、これからは日本でやることになると思います。

--社内公用語はどうしますか。

買収したときから取締役会議は日本語と英語の同時通訳。社内公文書は日本語と英語で必ず二つずつそろえる。全員が英語ができるわけではないし、それは変わりません。こればかりは日本人はダメですな。
(山崎豪敏(編集長)、鶴見昌憲 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)

いずはら・ようぞう
1938年9月生まれ。62年京大法学部卒業、日本板硝子入社。88年子会社・日本硝子繊維常務、92年同社長、96年日本板硝子常務、98年社長、2004年会長。

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