スティール反対で大揺れ 役員に“欠員”発生 アデランスの窮地
今回、スティールのほかに役員再任に反対したのは外国人投資家と見られており、足元の業績不振も大きく影響したようだ。2007年度の連結売り上げは749億円と前年実績を若干上回ったが、経常利益はほぼ半減し44億円。最大の減益要因は同社のコア事業である国内のアデランス、特に男性向けの苦戦にある。しかもこれは、3年前の中期経営計画で目標に掲げた07年度売り上げ800億円、経常利益120億円には遠く及ばない。総会当日、再任否決というニュースが市場に伝わると、アデランス株は値を上げている。
かつて同社の大株主は国内の銀行が名を連ねていたが、今や外国人株主比率が約5割。また、アデランスの第2位株主ステート ストリートは、国際的な顧客資産の管理を行う金融機関で、あくまで「名義上」の株主。背後の実質的な株主は会社側も知りようがない。実際、米投資顧問会社のドッチ・アンド・コックスは、この1年でアデランスの保有株比率を6・5%から10・3%(大量保有報告書ベース)にまで拡大したが、アデランスはドッチ名義での所有株式数を確認できないとして、有価証券報告書にも大株主の順位に含めていない。外国人株主とはいえ、実質株主がどの名義で委託しているかがわからなければ、スティール以外の事前の票読みは無理なのだ。
スティールに歩み寄り? 臨時株主総会の行方
“暫定”経営状態を長引かせるわけにもいかず、アデランスは8月上旬に臨時株主総会を開き、新経営陣を決める予定だ。臨時総会で議決権を行使できる株主は6月30日を基準日として確定する。
現経営体制にこだわるならば、4月に発表した経営計画をさらに具体化し、株主に改めて理解を求めるしかない。だが、筆頭株主のスティールが現経営陣を明確に否定している以上、修正計画だけでの賛同は厳しいだろう。臨時総会に向け、スティールが株主提案として役員候補を挙げるようだと、落ち着き所はさらに混迷する。
1年前、株主総会後に会見した岡本孝善会長(当時)は「企業価値向上策をさらに加速して実行し、成長を実現していきたい」と意気込んだ。否決の事実を突き付けられ、再提案する「最善の経営体制」とはいかなる布陣なのか。アデランスは難しい答えを迫られている。
(井下健悟 =週刊東洋経済)
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