くら寿司が惨敗した「牛丼」に再挑戦するワケ あの専業チェーンにも勝てるこれだけの根拠
まず1つは「オペレーション」の改善だ。店舗ごとに調理して失敗した4年前の失敗を教訓に、今回は首都圏や関西圏など全国数カ所の工場に製造をまとめて委託した。それらの工場では、くら寿司指定のレシピに沿って肉やタマネギが調理され、出来上がった具材を顧客1人分ごとにパック化し、全国配送されていく。
くら寿司の店頭では、顧客から注文があれば、パック化された具材を温めるだけだ。この仕組みを確立したことで、顧客ごとの分量のバラツキを解消しただけでなく、迅速な商品提供を可能にした。実際に店頭で牛丼を注文したところ、およそ3分で商品が手元に届いた。
2万食・500種類の試作品を試す
こだわったもう1つは「味付け」である。牛丼は濃い味のだしが必要になるが、回転寿司チェーンらしく素材の風味を生かした魚介のだしに挑んだ。
ただ、これまで手掛けてきたうどんや茶碗蒸しと違い、魚介のだしを使いながら濃い味を出す調整が困難を極めた。牛丼はシンプルであるゆえに味の調整が難しく、少し配分を変えただけでも味が大きくぶれてしまう。開発を担当したくらコーポの製造本部の松島由剛・商品開発担当マネージャーは、シャリカレーや「冷やし中華はじめました」を生み出したヒットメーカーとして、知る人ぞ知る存在。今回の牛丼開発では、2万食・500種類もの試作品を食べることを繰り返し行い、ようやく完成に漕ぎつけたのである。
素材のうまみを引き出すため、肉とタマネギを個別に煮込む独自製法も採用した。米も安価なものではなく、寿司ネタでも使用している、北海道や九州などの国産米を使用することにこだわった。
「やっと出たか」。完成品を口にしたくらコーポの田中邦彦社長は、ようやく納得できる味に仕上がったことに満足し、そうつぶやいたという。
時間をかけて開発、満を持して投入したくらコーポ。だが、気になるのはどこまで勝算があるのか、ということだ。外食業界の中でも牛丼と言えば、吉野家ホールディングスの「吉野家」やゼンショーホールディングスの「すき家」など、大手チェーンが長年しのぎを削ってきた、最激戦区の商品と言っても過言ではない。
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