クリントン氏のメール問題はどれほど深刻か 日本株は予想以上に堅調だがなお下落リスク
この報道を受けて、米国の主要な株価指数は前日比下落に転じた。また当日発表された米7~9月のGDP統計が予想を上回ったとして、米ドルは対円で105円台半ばに上昇していたが、105円割れに反落して引けている。
メール問題がくすぶっても、クリントン氏が大統領選に勝利するものと予想するが、市場では「捜査の結果が出るまで待とう」と、少なくとも様子見気分が広がり、米国株価の上昇力がそがれる展開が見込まれる。
他の要因としては、米長期金利の上昇も気になるところだ。金利の上昇自体は、米国景気が強いことの反映なので、あまり憂慮する必要はあるまい。ただし、長期金利は市場が決めるものなので、市場に極端な観測が広がると、債券相場が短期的に大きくブレる恐れがある。長期金利が急伸すれば、米株価を下ブレさせる展開が懸念される。
米ドル円相場の行方も、引き続き気にしている。米国時間で10月14日(金)夕刻に発表された、米財務省半期為替報告書では、米ドル高けん制の色合いが、強く打ち出されたが、市場は全くそれを軽視している。
実際の為替相場は、米ドルは対ユーロでは、足元こそ若干軟化はしているが、引き続き高水準だ。一時は中国元の対米ドル相場が大幅に切り下がったため、ルー米財務長官が、中国の汪副首相と電話会談を行ない、元相場下落の背景を尋ねたと聞く。加えて、最近の米株式市場では、米ドル高を米株安の要因として挙げる解説が増えてきている。こうした諸材料を踏まえると、対円も含めて、米ドル高けん制のトーンが強まる展開は、いつあってもおかしくない。
前述の米長期金利上昇と米ドル円相場の関係では、今の市場は「米長期金利上昇=米ドル高」との解釈で動いているような感触だ。しかし米長期金利が急速に上昇する(米長期債券価格が急速に下落する)展開においては、米長期債券市場からの資金逃避というシナリオが急浮上し、「米長期金利上昇=米ドル安」という解釈に変化することがありうるだろう。
もし株価が急落しても、そこは「売り」ではない
こうした主に米国発の不安定要因を踏まえると、このまま一本調子で国内株価が上伸を続けるとは見込みがたい。国内企業の決算発表は今週も続くが、これまでは、「思ったほどは悪くなかった」として、減益決算でも株価が上昇するケースもみられる。しかしこれは、全体相場の堅調さに雰囲気として飲み込まれた感もあり、輸出企業にまだ円高の悪影響が色濃いこともあって、今後は企業決算が株価抑制材料として働きそうだ。
ただし中長期的には、最初に述べたように、株価が最も厳しいのは11月初旬までだと考えている。その後は世界景気の持ち直しに沿った、日本株も含めた世界的な株価上昇基調(ただし二進一退の緩やかなもの)を予想している。押し目を待って拾うもよし、「押し目待ちに押し目なし」と割り切って、多少株価が高くても今から買い集めるもよし、あるいは、時間分散として、少額ずつ徐々に買い下がりあるいは買い上がりしていくのもよいだろう。肝要なのは、当初筆者が予想していたような、国内株価の急激な下振れがあったとしても、そこは売るところではない、という点だ。
今週は、イベントの数自体は多い。ただ、日銀の金融政策決定会合(10月31日(月)~11月1日(火))も、米FOMC(11月1日(火)~11月2日(水))も、金融政策の変更はなく、無風だろう。11月4日(金)の米雇用統計(10月分)待ちの様子見気分も広がり、動意の薄いなか、じわりと内外の株価が軟化する展開を見込む。このため今週の日経平均のレンジは、1万6900円~1万7500円を予想する。
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