米大統領選「ヒラリーで決まり」は早すぎる なぜ米国の選挙は今も平日の火曜日なのか

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この年(2004年)、投票日の前々日、筆者の元に夕食時に知らない男から電話があった。なれなれしくファーストネームを呼ばれ“選挙に行かないか”と誘われた。自分は日本人で選挙権(投票用紙)がないというと、“気にしなくていい”と返された。

この頃、筆者はシカゴ(イリノイ州)郊外のパークリッジに住んでいた。実はそこはヒラリー氏の故郷だ。町は共和党色が強く、ヒラリー氏は、高校生までゴールドウォーター著のConscience of a Conservative (保守的良心)を信奉する女の子だった。そこに住み始めて5年、隣人は我々が日本人の家族であることは知っていたが、投票所で誰かに会ったとしても、選挙権の有無を疑われることはなかったはずだ。謎の男はそのようなことを調べた上で誘ってきたと思われた。

結局、彼は誰に投票して欲しいか言わなかった。だが、直前、ウォールストリート・ジャーナルに、ウィスコンシン州で投票人口よりも多い選挙用紙を申し込んだ自治体の選挙責任者の記事があった。その責任者は共和党だった。正直「投票には行ってみたい」と思ったが、ブッシュ大統領に投票して欲しいのは明らかだったので、断った。

そしてこの選挙、常に焦点になるオハイオ州で、ケリー氏は11万票差で負けた。アメリカで話題のドキュメンタリー「The Best Democracy Money Can Buy」では、この時オハイオでは、選挙を仕切る共和党関係者によって、30万票が不正にそぎ落とされ、9万票が開票されなかったとされた。

さらにゴア副大統領が、フロリダの「僅か537票差」でブッシュ大統領に負けた2000年は、当事フロリダ州知事でブッシュ氏の弟であるジェブの力で、黒人・ヒスパニックの9万票がコンピューターの不正操作でそぎ落とされていたという告発もあった。

今回、トランプ氏は「民主党の報復?」を受けるのか

当事からこのような不正は言われていたが、今回“RIG”を訴えているのは共和党候補のトランプ氏の方だ。RIGとは、マーケットでも良く使われる用語。市場では法的に引っかかるイカサマというより、大掛かりなストーリーで民衆を煽動し、追い詰めるシナリオの意味で使われる。

トランプ氏はTV討論でも“この選挙はRIGされている可能性があり、敗北を認めるかどうかはその時次第だ”とした。すかさずヒラリー氏陣営は「アメリカの民主主義を冒涜する行為」と攻勢に出ている。過去、ゴア、ケリーと、共和党に選挙を盗まれたと考える民主党からすれば、共和党のトランプ氏が選挙の不正を言うのは許せない。

ただトランプ氏の立場では、今回は半数以上の投票所でマシーンが使われることを警戒するところだ。マシーンはヒラリー氏を支持しているバフェットが所有する会社が一手に請け負っている。個人的にはトランプ氏が危惧する事態は起きないと期待するが、今回ばかりは何が起きるか判らない。

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