トヨタのアルミテープがもたらす驚きの効果

「レクサスRX」や「86」にも貼られている

トヨタ自動車による放電用アルミテープは、同社の車両技術開発部の提言によるものだそうだ。「空気はプラスに帯電、車体もプラスに帯電。そこで空気の流れをはがす方向にクーロン力が働きます」と同部の技術者は説明してくれた。クーロン力とはごくごく簡単にいうと静電気みたいなものだ。

空気がウィンドシールドまわりではがれてしまうことのデメリットは空気がきれいに流れないため走行抵抗になることだ。つまり速度が落ちる。放電させるとさらに接地性も向上する。おもしろいのは、レーダー探知機というものがあるけれど、あれをダッシュボード上端のウィンドシールドガラスに近いところに置いておくだけでも大きく帯電し空気の流れが乱れるそうである。

バンパー四隅やステアリングコラムもそれぞれ理由が掲げられている。これらは話だけ聞くとなんだかオカルトめいて感じられるかもしれない。けれど実際にラリーをやっていた知人に言わせると、昔からサスペンションの一部にアルミテープを貼ることで動きがよくなることは経験的に知られていたそうだ。

86でも貼らない仕様と貼った仕様とで試すと、ちゃんと乗り心地や操縦性のフィールが変わった。「わかるひとは走りだして時速10km出しただけでわかる(10km/hあたりで通常500ボルト帯電するいっぽう、放電用アルミテープがあると150ボルトぐらいで抑えられるとか)」とトヨタ自動車の技術者は言う。

すでに2014年から採用されている

レクサスにも採用されているのだそうだ。

トヨタ自動車が提案する放電用アルミテープ。じつは今回が初めてではない。バンパーあたりに貼ることで直進安定性が増すことが注目され、2014年のノア/ヴォクシーから採用しているそうだ。現行のレクサス RXにも貼っている。86は摘要する範囲を拡大したモデルですべてのモデルが放電用アルミテープを貼られているという。

「本当は使いわけがベストです。86でも、グランドツアラー的性格が強いG Limitedは直進性を向上させるためにバンパーに貼るといいけれど、走りを積極的に楽しむGグレードはバンパーには貼らずに軽快感を活かしたいです」。トヨタ自動車の技術者はそんなふうに使いわけがベストと教えてくれた。

ウィンドシールドに貼ると、空気が車体を地面に押しつけてタイヤのグリップをよくするダウンフォースが発生し、そして接地性が向上し、カーブなどではロールが抑制されるそうだ。バンパーとドアガラスは直進安定性をよくし、ヨースタビリティ(上から見たとき車体の中心軸を中心に車体が左右に振れる動き)を安定させ、操縦時の応答性がよくなる。ステアリングコラムのアルミテープは、ホイールハウス内での空気の乱流を整流しタイヤの接地性を改善するとともに、ハンドルの細かな動きにもシャープに反応する応答性のよさを実現する。トヨタ自動車はそう説明してくれた。

僕はこのとき「おみやげをください」とねだって、実験のための普通のアルミテープを5センチ四方ぐらいの大きさで分けてもらった。それを持ち帰り自分のBMW 3シリーズのステアリングコラムに貼ったところ、驚くべきことに変化がかなり大きかった。まずは貼らないでステアリングコラムの表面でアルミテープを動かすと明らかにハンドルを切ったときのフィールが変わる場所がある。そこに貼ったところ、しっかり感がぐっと増して、切ったときの車体の反応は明確に向上したのだ。

「電気ではほかにも効果的なことがあります。これからもいろいろ紹介していきたいと思っています」。自動車ってもうすぐ自動運転とかいわれているいっぽうで、まだこんな“発見”があるのだ。そこがじつにおもしろい。放電用アルミテープに代表される小さくても重要な技術とそれに注目する技術者に「GO」を。

(文・小川フミオ)

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