過労によるうつ病など精神障害による労災申請は、2015年度、前年度比59件増の1515件、支給決定件数は前年度比25件減の472件となりました。申請件数は「製造業」262件、「医療、福祉」254件、「卸売業、小売業」223件の順に多く、支給決定件数は「製造業」71件、「卸売業、小売業」65件、「運輸業、郵便業」57件の順に多くなっています。
2015年12月には労働安全衛生法が改正され、従業員50人以上の事業所に年1回の「ストレスチェック」の実施が義務付けられました。
この10月7日に厚生労働省が公表した過労死等防止対策白書によれば、正社員の残業時間が月80時間超えと回答した企業の割合は、全体で22.7%に達しました。業種別にみると「情報通信業」(44.4%)、「学術研究、専門・技術サービス業」(40.5%)、「運輸業、郵便業」(38.4%)の順に多くなっています。
政府の働き方改革の柱にも、時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正が掲げられました。現状、36協定は特別条項付き協定を結べば、残業時間を無制限に延ばせる仕組みになっていますが、残業時間に上限規制を導入する議論も活発化してきそうです。
安倍首相もモーレツ社員には否定的
9月2日に開催された働き方改革実現推進室の開所式では、安倍晋三首相が「長時間労働を自慢する社会を変えていく。かつてのモーレツ社員、そういう考え方自体が否定される。そういう日本にしていきたい」と訓示しました。法的にも労働契約法には、「労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、または変更すべきものとする」と、ワーク・ライフ・バランスに対する配慮義務が規定されています。
ところで、この原稿を書いている途中で、大きなニュースが飛び込んできました。2015年12月に大手広告代理店の電通に勤めていた新人女性社員が過労自殺し、労災認定されたことを受け、東京労働局の過重労働撲滅特別対策班が10月14日に立ち入り調査をしたというものです。
電通では1991年にも入社2年目の社員が過労自殺しました。その裁判は最高裁まで争われ、過労自殺について、使用者の安全配慮義務違反による損害賠償責任が認められました(最高裁2000年3月24日第二小法廷判決)。
再び起きた過労自殺の悲劇に、社会的にも一気に関心が高まり、加速する長時間労働是正へ向けた動きから目が離せなくなってきているのです。
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