就活で「過労死せずに済む会社」を選ぶには? 電通のような悲劇は決して他人事ではない

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協定の範囲内で残業や休日出勤をさせても、割増賃金を支払えば、法的には問題ありません。この労使協定について労働基準法36条に定められているので、「36(さぶろく)協定」とも呼ばれ、罰則を免れる規定のために免罰的効力があるともいわれます。

36協定で定めることのできる残業時間には、原則1カ月45時間、1年360時間など、上限の基準が定められています。しかし、これにも例外があり、特別の事情がある場合、特別条項付き協定を結ぶことによって、年6カ月までは合法的に上限の基準を超えることができることになっています。また建設業など、上限の基準が適用除外になっている業種もあります。

厚生労働省の平成25年度労働時間等総合実態調査によれば、中小企業では36協定すら締結していない企業も少なくありません。36協定を締結している大企業は94.0%、中小企業は43.4%、「特別条項付き協定」を締結している大企業は62.3%、中小企業は26.0%となっています。

時間外労働義務についての有名な判例、最高裁判所1991年11月28日第一小法廷判決(日立製作所武蔵工場事件)では、「36協定の締結・届出があり、就業規則の規定内容が合理的なものであれば、労働者はその定めるところに従い、労働契約に定める労働時間を超えて時間外労働をする義務を負う」と判示されました。残業命令に従わない場合、業務命令違反として懲戒処分を受ける可能性もあります。

月80時間超が過労死認定の基準

2015年4月、東京と大阪の労働局に、違法な長時間労働を行う事業所に対して監督指導する過重労働撲滅特別対策班が新設されました。今年4月には全国の労働局に、長時間労働に関する監督指導などを専門に担当する過重労働特別監督監理官を配置し、対策の強化に取り組んでいます。

たとえば、2015年7月2日には36協定で定められた上限を超えた残業をさせていたとして、ABCマートが書類送検されました。労使協定で定めた上限(月79時間)を超える、月97~112時間の時間外労働をさせた疑いで、残業代自体は支払われていました。

また今年9月29日には、サトレストランシステムズが違法な長時間労働、賃金不払い残業で書類送検されています。労使協定で定めた上限(月40時間)を超えて、月最長111時間18分の時間外労働をさせ、かつ法定割増賃金を支払わなかった疑いです。

特に監督指導が強化されているのは、「月80時間超」の残業がある事業場に対してです。この月80時間超の残業は、労災保険の過労死認定基準において、”業務と発症との関連性が強い”とされている時間になります。

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