格差を是正できる「必要の政治」とは何なのか

この日本から「理不尽」を無くすことは可能だ

井手:頭が本当に悪かったらどんな努力をしたって東大には行けません。僕は男に生まれたので、子どもが生まれるから仕事を辞めたり、育児休暇を取らなくていい。仕事にひたすら没頭できます。生まれた時に極貧でなかったから塾にも行かせてもらえた。障害もないのでやりたいことを思いっきりやって生きてこられました。でも、これって全部「運」なんです。頭がいいかどうか、男に生まれるか、家が貧乏か金持ちか、障害があるかないか、都市に生まれるか地方に生まれるかも運。今、田舎から慶應に来る子は本当に少ないです。運で人生が決まるなんて 、めちゃめちゃじゃないですか。

もしかしたら、芸人さんくらいしか運と関係なく生きられる世界はないのかもしれない。ブサイクでも、貧乏でもそれが売りになったり、頭が悪かろうと必死やっていけば、その世界でのし上がっていけるという珍しい業界だと思うんです。でも、ほとんどの世界は運で決まってしまいます。これは「異常」です。生まれた時に運がいいと幸せになれて、運が悪いとそれだけで一生不幸になる社会は異常以外の何物でもない。

助けられる側の屈辱を想像しよう

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木本:そうですよね。生まれた時点であきらめないといけないという話ですもんね。

井手:地方に生まれた瞬間に、慶應に来る確率が異常に低くなるんですね。下手したらあきらめなければいけない。これを僕は「理不尽」といいます。論理や理屈で生きていくのが学者ですから、僕は「理(ことわり)」を大事にしていますが、「理」で説明できないことが理不尽です、不条理といってもいい。学者として、そういうものと戦わなければいけない。かわいそうだから貧乏なやつを助けてあげようと「正義」を語る人はどこかズレている。そもそも助けられた人はとても屈辱的な思いをするという問題があります。

木本:確かに負い目や息苦しさを感じるかもしれませんね。

井手:助けるほうはいいことと思っても、助けられる側は恥ずかしい。例えば20〜30代で生活保護をもらっている人の自殺率はすごく高い。同世代の非受給者より何倍も大きいです。なぜ彼らが死んでいくのか。助けられる恥ずかしさというものを日本人が持っているからではないか。だったら僕は助けられる領域は最小にしたい。もし教育を無償化できれば、生活保護の教育扶助はいらない。医療費がタダになれば、医療扶助という生活保護がいらない。領域が広がれば生活保護はどんどんなくなっていくんです。

木本:なるほど。生活保護を受けている恥ずかしさを最小化すると。

井手:理由があって働けない人は、ご飯を食うためのおカネさえあれば生きていける社会にする。そうすると社会のお荷物だとか、社会に助けてもらっているとか、そういう悲しみを抱えて生きる人を少なくできる。

木本:熱いお言葉、ありがとうございます。今回、私自身も考え方が大きく変わりました!

(構成:高杉公秀、撮影:梅谷秀司)

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