北朝鮮が盛大なエアーショーを挙行したワケ 最高指導者肝いりで開かれたイベントの正体

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会場がある元山市は、2013年3月に開催された党中央委員会全員会議で、同市と近隣の一大観光地である金剛山地区一帯を国際的な観光地区として開発すると、金委員長自らが打ち出した場所だ。

2013年6月には、元山・金剛山国際観光地帯を設置することが最高人民会議常任委員会で決められ、空港をはじめインフラ整備に力が入れられていた。また、元山港はかつて、日本の新潟港と同港を結ぶ旅客船「万景峰92号」の母港でもある。

金委員長が観光都市づくりを指令

高麗航空が保有する「ツポレフTu-154型機」など民間機も

今回のエアーショーは、元山市にとっても初めてと言って過言ではない国際的観光イベントであり、前述した国家方針に沿った行事として力が入っていた。

事前には英文のホームページも作られ、イベント内容や入国手続きの説明、付帯イベントの紹介、周辺観光地など、北朝鮮にしては手の込んだホームページを作成しており、広報・集客に余念のない姿勢も見せていた。

エアショーの司会を務めた2人

特に、今回のエアーショーを観覧するため、北朝鮮国内の観光客が大勢いたことが目を引いた。午前9時の開催時刻前から、観覧スペースには大勢の団体客が陣取り、ショーが始まるのを待っていた。

「わが社だけでも1000人の観光客がエアーショーなど元山観光に訪れている」(北朝鮮・平壌旅行社の案内員)。元山はもともと観光地であることに加え、前述したように最高指導者肝いりの場所となった。今後はより観光地としての整備を進め、内外に観光都市をアピールするために、今回のエアーショーが企画・開催されたのだろう。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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