フィリピン、多すぎる麻薬撲滅戦争の死者数 わずか3カ月間で3400人以上の死者
フィリピンでは、汚職と暴力という悪評のため、一般的に警察が軽蔑や恐怖の対象となっているが、デラロサ長官の人気は高い。
国家警察庁長官に就任してわずか2カ月だが、国内メディアはすでに彼をドゥテルテ氏の後継候補としてもてはやしている。ただし、マーティン・アンダナール大統領広報官はこれを「憶測」と断じている。
ドゥテルテ大統領は麻薬密売業者の殺害をたびたび呼びかけており、デラロサ長官も扇動的な発言を繰り返している。
先月の演説では、麻薬常用者と密売業者に、貧困層を搾取することで富を築いた麻薬王たちを殺すよう呼びかけた。
「ここの麻薬王が誰だか知っているだろう。彼らの家に行き、ガソリンをかけて火をつけろ。怒っているところを見せてやれ」
デラロサ長官はこの「麻薬戦争」における作戦を熟知しているだけに、殺害に関して外部からの調査が行われる場合には重要な対象になる可能性があるとフィリピン人権擁護連合のRose Torajano事務総長は語る。だが、誰かがそのような調査を行うのかどうかは不明だ。
「彼は大統領の優秀な兵隊だ。だが彼にも恐怖感はあるだろう」と同事務総長は言う。
デラロサ長官は、警察の取り締まり中の殺害は合法であり、「捜査過程での死亡」の大半は麻薬シンジケートによる殺害であると確信しているとロイターに語った。「彼らはお互いに殺し合っている」
「プレッシャーを感じる」
個人的には、デラロサ長官は真剣ではあるが礼儀正しい人物であり、そして彼はプレッシャーを感じていると言う。
「私が心配しているのは、自分に期待されていることを完遂できないのではないかということだ」と彼はロイターに語った。
ドゥテルテ大統領は9月18日、麻薬撲滅作戦をさらに6カ月延長すると宣言したが、デラロサ長官は時間が足りないという焦りを覚えると語る。
長官によれば、作戦の最大の障害は、現地では「シャブ」と呼ばれている中毒性の高い麻薬、結晶メタンフェタミンの多数の常用者に対する更生サービスを提供すること。そして、麻薬の国内流入、特に中国からの流入を防ぐことだという。
「自首」と呼ばれる手続きによって、当局に届け出た常用者・密売人は70万人以上に及ぶが、支援制度や施設は極めて少ない。現地メディアの報道によれば、届け出た人々も多数殺害されているという。
デラロサ長官はロイターに対し、麻薬戦争による死者の数は増え続けると予想する。「日ごとに死者数は増えている。逮捕者も、自首する者も毎日増えている」
他国からの批判に対して、長官は苛立ちを示す。米国が殺害について「深く懸念」していると述べたほか、国連の専門家2人も、ドゥテルテ大統領が、国際法が禁じる暴力の扇動を行っていると告発した。