フィリピン、多すぎる麻薬撲滅戦争の死者数

わずか3カ月間で3400人以上の死者

「彼らは私たちを殺人者に仕立て上げようとしている」と長官は言う。「本当に心を痛めている。私たちはフィリピン国民のために良かれと思ってやっているのに」

デラロサ長官によれば、麻薬撲滅作戦が開始される以前には、人々は恐がって家を出なかったという。「今、状況は逆転した。法律を守る人々が外に出て、犯罪者が隠れるようになっている。その違いが分かるだろうか」

だが、他の重大犯罪が減少する一方で、殺人率は急増。一部の地域住民はロイターに対し、警察と自警団による殺戮があまりにも怖いので、暗くなってからは外出しなくなったと話している。

大統領との二人三脚

以前はボクサーになることを夢見ていたというデラロサ長官は、ダバオ市の南にある故郷にちなんで「バト」という愛称で知られている。現地のタガログ語では「岩」という意味もある。

長官の亡父は輪タクの運転手で、彼を学校にやるのが精一杯の暮らし向きだった、と長官は6月フェイスブックに追悼文を投稿している。

ダバオ市はドゥテルテ大統領が22年にわたって市長を務め、苛酷な麻薬撲滅作戦を行った場所である。同市の警察で昇進するなかで、武闘派のデラロサ氏もこれに参加するようになった。

「私は彼のやることが気に入ったし、彼も私のやることを気に入っていた。それで、私たちは友人になった」と長官は回想する。ドゥテルテ氏が彼をダバオ市警察署長に据えたのは2012年である。

ダバオに本部を置く人権団体は、同市において自警団とみられる殺人が1424件あったと記録。そのうち162件が、デラロサ氏が警察署長を務めていた2012─2013年に発生した。

この調査結果について質問すると、長官は「調べてみる」と述べ、「そのようなデータは記憶にない」と付け加えた。

ドゥテルテ大統領は、他のもっと高位の警察官僚を飛び越えて、デラロサ氏を長官の座に据え、ダバオ風の苛酷な犯罪撲滅モデルを全国展開する自由裁量権を与えた。

フィリピン国内のさまざまな民族が暮らす高地バギオに設けられた警察拠点で、デラロサ長官は部族風の髪飾りと衣装をまとい、麻薬撲滅の努力をたたえ、現地の警察官たちを表彰した。

何百人もの警察官が、長官と一緒に自撮り写真を撮りたがり、長官はそのたびに希望に応じた。人々の陰に隠れて、長官のトレードマークであるスキンヘッドしか見えないことさえあった。

だが、警察の宿営地でさえ長官は6人のボディガードに囲まれていた。彼は「(麻薬密売業者が)いつ私を殺しに来るか分からない」と語った。

長官は、国内人気トーク番組のインタビューのなかで、大学時代に2回マリファナを試してハイになったことがあるが、将来が台無しになると思ってやめたと語っている。

他のテレビ番組では、警察官としてのキャリアのなかで撃った人数について、「(警察)長官が殺人者だと言われかねない」という理由で答えなかった。

デラロサ長官を取材したことのある現地のジャーナリストたちは、同長官が喫煙や飲酒するところを一度も見たことがないと語る。彼の主な趣味は銃の収集だという。

「彼は銃を愛している」と語るのは、ダバオ市でデラロサ氏の部下だったアーロン・アキノ警視正で、現在は麻薬戦争関連で約500人の死者を出しているルソン島中心部で指揮を執っている。「彼はよい銃を見かけるたびに購入している」と話した。

(執筆:Andrew R.C. Marshall and Neil Jerome Morales 翻訳:エァクレーレン)

政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • Amazon週間ビジネス・経済書ランキング
  • ポストコロナのメガ地経学ーパワー・バランス/世界秩序/文明
  • 最新の週刊東洋経済
  • ブックス・レビュー
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
半導体狂騒曲<br>黒子から主役へ

情報通信に欠かすことのできない半導体。可能性は広がる一方、巨額のマネーゲームの様相も強まっています。国の命運をも左右し始めている激動の業界。日本と世界で今何が起こり、どこに向かおうとしているのかに迫ります。

東洋経済education×ICT