「お疲れさま」を日本人が多用する本当の意味

そこには相手を思いやる精神がある

そこで私は再び困惑してしまったのですが、それでも気持ち的に何か相手に言葉を掛けたいという思いが滞っていて、英会話やアメリカでの生活に慣れるまではすっきりしない気持ちで過ごしていたのをよく覚えています。

冒頭でも触れましたが、「お疲れさま」は、本来相手の労苦をねぎらう意味で用いる言葉です。しかし、私たちが使っている「お疲れさま」は、はたしてねぎらいの意味だけで使用しているかといえば、恐らく首を縦に振る方は少ないと思います。もはやその意味も複雑になっているので考えることすら放棄しがちですが、私たちは大きく分けて2つの意味で「お疲れさま」という言葉を使っているのです。

ひとつは、言葉の漢字から感じ取られるように、相手の「仕事」の苦労をねぎらう意味です。大変な「仕事」、大きな「仕事」をやりきった同僚や仲間にかける「お疲れさま」があてはまります。

もうひとつは、「挨拶」です。実は、この「挨拶」がとても複雑なのです。それは「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」の意味をはじめ、「やあ!」「元気?」「調子はどう?」というようなカジュアルな語りかけの意味をも含むからです。ここに私たちの頭を混乱させる原因があるのです。

試しに英語にしてみると、「Good morning.」「Hello.」「Good evening.」「Hi!」「How are you?」「How’s it going?」という感じになります。「お疲れさま」には多様な意味があるということを認識していなければ、英会話は不自然なものとなってしまいます。しかし、逆に考えてみると、この「お疲れさま」の意味の多様性をきちんと把握していれば、英語でも私たちがついつい口にしてしまう「お疲れさま」の「気持ち」を伝えることができるということになります。

ここで考えるべきことは、なぜ私たちは日頃ついつい「お疲れさま」を口にしてしまうのかということです。

例えば、同僚や仲間とすれちがったときなど、別に何も言わなくてもよいところを、言葉を発してしまうのはなぜなのでしょうか。むしろ、何か言葉を発しないと気まずいように感じてしまうことはないでしょうか。少なくとも私はそう感じてしまい、「お疲れさまです」という言葉を口にしたり、何も言わなくても会釈をしたりします。

「お疲れさま」を口にしてしまう心

では、なぜそのような感覚を持ってしまうのでしょうか。そこには、日本の「和」を大切にする精神が流れていると私は思うのです。この「和」というのは、国外に日本文化を説明する際に使用される代表的な表現のひとつです。この「和」とは、辞書によると「仲よくすること」「互いに相手を大切にし、協力し合う関係にあること」「調和のとれていること」を意味するようです。

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