航空機業界の巨人であるボーイング、エアバスはいずれも100席以下の旅客機を手掛けておらず、このクラスはエンブラエル(ブラジル)とボンバルディア(カナダ)の2社が市場を二分。さらに軍用機で知られるロシアのスホーイ社が2011年に出荷を開始、中国企業も同サイズ機の開発を進めている。
いちばん最後に名乗りを上げたのがMRJだ。多くの実績がある2社のみならず、ロシア、中国勢にも地盤を確立されてしまったら、参入のチャンスは永久になくなる――。三菱重工が2008年に開発本格着手へと踏み切った背景には、そうした強い危機感もあった。
MRJは開発スタートが最後発になった分、米国プラット&ホイットニー社が開発した最新鋭の次世代型エンジンを採用。同エンジンは燃費性能と騒音などの環境性能に優れている。また、機体のデザインにおいても、最新の空力設計技術を取り込んだ。三菱航空機の二ツ寺直樹・機体設計部長は、「われわれが目指すのは、次世代のリージョナルジェット機。経済性、環境性、快適性。そのすべてにおいて優れたものになる」と話す。
燃費性能を武器に大口受注、「シェア5割取る」
中でも最大の“売り”は、他社機種より2割優れているという燃費性能だ。現在、リージョナル機の平均的な1日当たりの総運航距離は6000キロメートル前後で、その燃料コストは1機当たり年間6億円前後に上ると言われている。燃費性能が2割違えば、それだけで年間のコストが1億円以上浮く。燃料高に頭を抱えるエアライン(航空会社)にとって、これは非常に魅力的だ。
高い性能を掲げるMRJに、海外のエアラインからも大きな注目が集まる。昨年12月には、米国のスカイウェスト社から、オプション(=優先予約権)を含め200機の大口受注を獲得。これでバックオーダーは確定分が170機、オプションも含めると300機を超えた。MRJの定価は1機4200万ドル(42億円弱)。定価で計算すると、金額にしてざっと7000億円の受注をすでに確保したことになる。
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