最も印象的なのは、駅舎の南隣で、複合商業施設の建設が進んでいた光景だった。6階建てで、ホテルや飲食・物販機能を備え、2017年2月の開業を目指す。300mほど離れた街区では、10階建ての道営住宅も姿を現していた。
数百メートル四方の区画整理区域は、全体としてはまだまだ空き地が目立つものの、駅舎建設以前の田園風景を思い起こすと隔世の感がある。利用の立ち上がりも、たとえば東北新幹線・新青森駅開業時よりは早い。もちろん、上越妙高駅前のコンテナ店舗「フルサット」が示すように、「駅前活用=大型ビル・商業施設」という感覚そのものを問い直さざるを得ない時代を迎えていることは間違いない。
青森市では、新青森駅前の未利用地を活用した産直イベント「あおもりマルシェ」が誕生し、その後は同市南郊に場所を移して、回を増すごとに出店者が充実している。今後、どのような動きが新函館北斗駅前の空間から生まれるか。少し長いスパンで注目したい。
新函館北斗駅の裏側に当たる北口では、北斗市の公認キャラクター「ずっしーほっきー」を主人公にした「田んぼアート」が人目を引いていた。駅舎2階の窓から眺められるようデザインされている。”正体”は「市特産のホッキ貝とブランド米・ふっくりんこで作った寿司」だという。函館市の公立はこだて未来大学生が創作したキャラクター群から、市民の投票で選ばれた。
函館山と駒ヶ岳の大パノラマ高原
田んぼアートの左手奥に、スキー場が設置された丘陵地が見える。ここが、北斗市が売り出そうと懸命の「きじひき高原」だ。標高683mの木地挽山の山腹に、放牧場やキャンプ場が広がる。これまでの調査では時間の余裕がなく、8月中旬の訪問でようやく、知人の車で案内していただいた。
標高560m地点にある展望台に立ち、息をのんだ。左手に道南のシンボル・駒ヶ岳と大沼、さらには噴火湾が望める。快晴時には、はるか羊蹄山も姿を見せるという。右手は、津軽海峡に突き出た函館山と函館市街地、青森県・下北半島が視界に入る。
道南の地理に詳しい方ならご理解いただけると思うが、函館山と駒ヶ岳を同時に、左右に見渡せるポイントがあるとは、想像もできなかった。少し大げさに言えば「本州を縦断する飛行機の機窓から、日本海と太平洋を同時に望む」という感覚に近いだろうか。
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