ベゾスの右腕を務める32歳デザイナーの正体 「ワシントン・ポスト」を支えるキーパーソン
当時、「ワシントン・ポスト」は大きな変革の時を迎えていた。まだグレアム家が所有していたころで、まだ紙の新聞に深く根ざしていた。Webサイトと紙の新聞の統合を決断した「ワシントン・ポスト」は、それを推し進める人材を必要としていた。マーバーガー氏はこのとき、デジタル寄りの新しい人材のひとりとして雇われることになる。
そして2013年秋のある日、何もかもが変わった。マーバーガー氏はアップルのデザイン研究所のオフィスにいたところを上司に呼ばれ、すべてを中断して「ワシントン・ポスト」売却の緊急対話集会に当たるようにいわれた。マーバーガー氏は最初、ベゾス氏をオーナーに迎えることに自信がなかった。
「ビッグネームともデザインに対する難題ともこれまで対処してきたため、不安だったわけではない。ただ、彼は怒鳴るという話を聞いていた」とマーバーガー氏。しかし、ベゾス氏と電話会議を重ねるうちに、新しいオーナーの新しいアイデアへオープンな姿勢と、ベゾス氏の思考過程の伝え方を理解するようになった。「ジェフは『自分は子どもで、砂場で遊びたいんだ』という調子だった。電話では毎回、彼を笑わそうとしているよ」とマーバーガー氏は語る。
「ワシントン・ポスト」に早い時期に採用されたデジタル人材のひとりで、現在はVox Mediaの成長戦略・分析担当バイスプレジデントであるメリッサ・ベル氏によれば、「ワシントン・ポスト」がデジタルに積極的になるにつれて、脇役として仕事をする新しいデジタル屋のひとりだったマーバーガー氏が、次第に中心的な役割を果たすようになっていったという。パンクスタイルにスケートボードという風貌だから、「彼をどう扱えばいいのか、みんなよくわからなかった。でも、彼はジャーナリズムをとても深く愛している。彼はポストの人々にどうにか理解してもらい、気に入ってもらうことができた」とメリッサ氏は語る。
プラットフォームの脅威を分析
「ワシントン・ポスト」は変化を加速させたが、デジタルの勢力図も急激に変わった。同紙は現在、フェイスブックとグーグルが支配する世界を切り開いていく必要があることを自覚している。ほかの新聞社は、こうしたプラットフォームをマネタイズできるのか、参照トラフィックが継続的に来ると当てにできるのかに確信がもてず、メディアがもつ影響力とそのコンテンツをプラットフォームに譲ることに慎重になっている。しかし「ワシントン・ポスト」は、狙うは課金をしてもらう購読者なのだから、もっとも大事なのはオーディエンスが増えることだという理由で、すべての記事をフェイスブックの「インスタント記事」として投稿しており、またアップルのニュース集約アプリ「News」や、記事の読み込みを高速化するグーグルの取り組み「AMP(Accelerated Mobile Pages)」を支持している。