残念ながら相場は「下落方向」に向かっている ドイツ銀行の不安はいったん和らいだが・・・
こうした好材料があった一方で、悪材料として、欧州銀行の経営不安が浮上している。これは別に新味のある話ではなく、たとえばすでに2月から、ドイツ銀行が過去に発行した劣後債の利払いができないのではないか、との噂が飛んだりしていた(ドイツ銀行が、一部の債券の早期償還を打ち出し、資金繰り不安を払しょくしたため、騒ぎはいったん収まっていた)。
ドイツ銀行のみならず、欧州銀行全般について経営不安説が出がちなのは、ECB(欧州中央銀行)がマイナス金利政策の「先輩」であって、銀行の収益環境が圧迫されていることにある(ということは、「後輩」は?)。とは言っても、ドイツ銀行が今にも倒れるように騒ぐのは行き過ぎだろう。
足元の悪材料としては、ドイツ銀行が米司法省から、過去の住宅ローン担保証券の販売行為が不適切だったとして、140億ドルの課徴金の支払いを求められていることが挙げられる。
これにより同行は、BIS(国際決済銀行)で定められた自己資本比率の基準値を割り込む可能性があるが、メルケル首相は、ドイツ政府が米国に対し、140億ドルの「値切り交渉」を行なうことはない旨を発言した。とはいっても、資本不足(別に債務超過になるわけではない)になれば、増資すればよい話だ。また金曜日には、米政府が課徴金を54億ドル程度に減額するとの観測報道が伝わった。
もしドイツ銀行が、今回課徴金の減額があっても、今後も赤字を垂れ流し、資本不足となった場合、同行の増資に応じる投資家が見つからない、あるいは過度な経営不安説が横行して資金繰りに応じる向きが枯渇する、などのリスクはある。
また、ドイツ銀行以外の欧州個別行が、経営破たんする恐れも否定できない。とは言っても、金融システム全体を揺るがすような事態は、各国政府やEU(欧州連合)、ECBが放置しないだろうし、対応策は、2010~2012年の欧州財政懸念時(当時は、欧州諸国債を保有する金融機関に対する不安でもあった)に、整備されている。
企業決算は不振、11月上旬にかけ国内株価は下押しへ
欧州の個別銀行株に投資しているならともかく、日米等の株式市況全般については、欧州の銀行不安説により、心理的に株価が下振れする局面があっても、長期的な株価のトレンドを揺るがすには至るまい。
実際ドイツ銀行株は、9月29日(木)の米国市場(同行は、米国でも上場している)から翌30日(金)の欧州市場ザラ場にかけて下落し、初めて10ユーロ割れ(安値9.90ユーロ)となったが、その後は前述の課徴金減額の報道もあって大きく反発し、11ユーロ台を回復した。このため、欧米株式市況全般も、木曜日の大幅安の後、金曜日は反発して週を終えている。
今週は米国で雇用統計をはじめとする9月分の経済統計の発表が始まり、8月分の統計が総じて軟調であったところから、持ち直しを示すものと見込まれている。
一方、国内で発表される、2月決算企業の四半期決算については、足元の消費の軟調さを反映して、冴えないものが多いと懸念される。今週は、こうした様々な好悪双方の材料を飲み込みつつ、繰り返しになるが、国内株価は11月上旬に向けての下落基調をたどると予想する。この流れの中で、今週の日経平均の予想レンジを、1万5900~1万6700円とする。
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