残念ながら相場は「下落方向」に向かっている ドイツ銀行の不安はいったん和らいだが・・・

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前回コラム以降の2週間に、国内株価が「時折上振れした要因」としては、主に三つ挙げられる。

日銀、米大統領選、OPECが上昇を「後押し」した

ひとつ目は、9月20~21の日銀の金融政策決定会合で、マイナス金利の深掘りが行なわれなかったことだ。マイナス金利は、銀行が日銀に設けている当座預金に支払い金利を課せられるため、銀行の収益を圧迫する要因だと指摘されていた。

経済全般については、銀行が「金利を取られるよりましだ」として、低い金利で貸し出しに回せば、本来は景気刺激効果が出そうなものである。ところが、もともと景気の回復力が弱く、企業も家計も資金を銀行から追加で借りる必要が薄いため、銀行の貸出金利引き下げは過去の融資の借り換えを招くばかりで、景気浮揚効果は限定的なうえ、やはり銀行の収益は圧迫されてしまう。

したがって、金融政策決定会合前には、銀行株の先行きに対する警戒感が強かった。しかし、マイナス金利の深掘がなかったため、懸念された悪い政策が打ち出されなかったとして銀行株か買い戻された。このため国内株価指数全般も押し上げられたが、「日本株高=円安」の過去の相関関係に着目した短期筋が、円売りを行ない円安が進んだため、銀行株以外の輸出株にも買いが広がり、さらに日経平均が上昇する展開となった。

しかし、日銀の決定は、銀行株についての懸念材料が出なかった、というだけであって、何か良い材料が出たわけではない。このため、まず米ドル円相場が先んじて反落し、続いて翌営業日以降、銀行株指数は下落基調をたどって、国内株全般の圧迫要因となっている。

二つ目は、9月26日の米大統領候補の第1回テレビ討論で、クリントン候補の優勢が伝えられたことだ。これは二つの意味で好感された。ひとつは、トランプ候補が当選するという「トランプリスク」が後退したと解釈されたこと。もう1つは、両候補とも、このテレビ討論では、米ドル高をけん制する発言を行わず、為替相場が円安気味に推移したことだ。このテレビ討論の様子が報じられたのは、日本時間で9月27日の株式取引中であったが、日経平均株価は、この日のザラ場安値からザラ場高値まで、一時は400円近い戻りを見せることとなった。

三つ目は、OPEC(石油輸出国機構)の非公式会合では、減産合意が決裂すると予想されていた。ところが9月28日に、予想外に減産に向けての合意が成り、11月に開催されるOPEC定例総会で、具体的な減産幅を正式に協議する運びとなった。このため米国市場では、エネルギー株中心に株価が上昇し、翌29日の東京市場でも、市況関連株の株価が上昇を見せた。

ただ、この2点目、3点目の好材料も、それぞれ、クリントン候補の支持率上昇幅が限定的であった、また、OPECが定例総会で本当に最終的な合意を決定できるのかについて、懐疑的な見方も浮上した、といったことにより、早くも息切れしつつあるように感じられる。

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