地震・豪雨、鉄道の災害復旧を阻むコストの壁 南阿蘇鉄道、全線再開への長い道のり
こうした苦境に対して、全国の地方鉄道や鉄道ファンから支援やエールが送られている。被災後に発売した復旧祈念グッズも即完売。義援金も多く寄せられているという。ただ、復旧にかかるコストを考えればそれも焼け石に水。「地域の存廃に関わる」という状況を強く訴えていく必要があることは間違いないだろう。
ただ、この状況を踏まえても、「では国の支援で復旧しましょう」と簡単に運ぶほどことは甘くない。
一般的に、災害からの地方鉄道の復旧には鉄道軌道整備法に基づく補助スキームが適用される。復旧費用の半分までを国と自治体が負担し、残りの半分を事業者が負担するというものだ。ただ、赤字に苦しむローカル線では数十億円規模の復旧費用を担うことは難しい。その場合は線路や施設を自治体の保有にすることで事業者の負担をゼロにすることになっている。
財政難の自治体に厳しい負担
このスキームを適用すれば、南阿蘇鉄道も復旧への道が開けているかのように見える。しかし、問題となるのは自治体の負担分。南阿蘇鉄道全線再開には30〜50億円の復旧費用が見込まれるが、そうなれば地元自治体は15〜25億円を負担する必要がある。ただ、南阿蘇鉄道の株主でもある南阿蘇村や高森町はただでさえ財政難に苦しんでおり、鉄道復旧費用の負担は現実的ではないのだ。
ちなみに、東日本大震災でも三陸鉄道が同様の状況に陥ったが、この時は復興特別交付税によって事実上国が100%負担する形で全線運転再開を果たしている。ただ、これは東日本大震災における特例法。熊本地震でも同様の対応が可能かどうかは微妙なところだ。
そもそも、現状の復興予算のスキームでは支出できる予算額に限りがある。その中では、益城町を中心とした被災状況が大きかった地域の復興が最優先。7月の段階では益城町内には倒壊した家屋がそのまま残されている箇所も多く目についた。「地元では車で生活している人がほとんど。まずは阿蘇大橋を含む国道325号の復旧が優先」という声もある。そうした中で、南阿蘇鉄道の復旧が“後回し”となるのもある意味ではやむを得ないのだ。
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