“ギャンブル化”する日銀の金融政策 行きすぎた円安と不動産バブルのおそれ
行きすぎた円安も
巨額の金融緩和で国債市場が大きく動揺した一方、為替市場では金融緩和を好材料にして円安トレンドに拍車がかかった。緩和前に90円台前半だったものがたちまち100円をうかがう展開にある。
黒田総裁は4日の会見で、為替と金融緩和の関係について「中央銀行のマンデート(委任された権限)を超えているので申し上げかねる」と述べた。だが、一般論と断ったうえで「他の(国の経済や金融の)事情が等しければ、金融を大幅に緩和した国の為替レートが下落する傾向にある」と語った。表向きの効果には含めていないが、為替を意識していることは明らかだ。
昨年末以降、急ピッチで円安が進む中、JPモルガン・チェース銀行の佐々木融債券調査部長は黒田緩和の直後のある出来事に、ファンダメンタルズでは説明がつかない「円安バブル」だとの実感を強めた。
それは5日に公表された米国の雇用統計への反応だ。3月の統計では非農業部門雇用者が前月比8.8万人と従前の予想を大幅に下回った。回復期待の強まる米国景気が思いのほか弱いとなれば、ドルが売られて円安の勢いが止まるのがこれまでの動き。だが、ドル安・円高に傾いたのはほんの一時で、後はどんどん円安が進んだ。「これは完全に市場が壊れていると思った」(佐々木氏)という。
こうなると、日銀の強烈な金融緩和を受け、金利低下による運用難が予想される生命保険会社が外債投資を増やすというシナリオを外国人が形成するだけで、格好の円安材料となる。ここがちょうどいい水準というところで止まることはない。たいてい相場は行きすぎる。多少の過熱感を感じていても、おカネの流 れが一方向に動いているうちはそれに乗るという理屈は、株式市場とまったく同じだ。
国内投資家が保有の9割超を占める国債市場では、日銀が占拠することで市場の機能を低下させられる。一方、世界中で動く巨大な為替市場はコントロールできるものではない。日銀の金融緩和が今の円安を後押ししていることは確かだが、行きすぎた水準になったからといって、居心地のよい水準に修正することなどできるはずもない。