日銀「新たな枠組み」に冷めた見方が多いワケ 一歩踏み込んだ姿勢を見せたが・・・

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第一生命経済研究所の熊野英生・主席エコノミストは「量的緩和ではいずれ(国債の買い入れ額に)限界が来る。金融政策の主軸を金利にシフトしたことは、限界論に対するアンチテーゼを示すうえで好ましい」としながらも、2%を安定的に超えるという物価目標については「飛べないハードルをさらに上げたようなもの。(金融緩和は)長期戦になる」と先が見えなくなったことを危惧する。

東短リサーチの加藤出・チーフエコノミストは「市場にせっつかれるたびに追加緩和に対応せざるを得ないという状態から脱却するには、枠組みの変更は歓迎すべきこと」とする。

ただ、「長期金利ターゲットの一番の問題点は出口が難しいこと。インフレ期待が上がると、長期金利のコントロールは難しくなる。逆説的だが、日銀は当面2%の目標は達成しないと考えているのだろう」という見方だ。

副作用大きく、マイナス金利の深掘りにも限界

加藤氏も「2020年の東京五輪前に出口はない」とみる。長期化することの弊害は、「それまでに米国が景気後退期に入り、量的金融緩和第4弾に踏み切れば、円高圧力への対処を迫られる」(加藤氏)ことであり、「そうなれば、おそらくマイナス金利の深掘り(マイナス幅の拡大)で追加緩和を行うことになるが、銀行、年金、生命保険には悪影響で、いつまでも続けられるというわけではない」と指摘する。

「金融緩和が効果を発揮するには、潜在成長率を高めていかなければならず、結局は成長戦略や構造改革が必要。地方の経営者と話すと、『”マイナス金利”というものをやらなければならないほど日本経済が危機的なら、しばらく投資を控えて様子を見る』という声が聞かれた。現状の金融政策は完全に裏目に出ており、かえって人々を不安にさせている」(加藤氏)

新たな枠組みにより、一歩踏み込んだ姿勢を見せた日銀。ただ、金融政策だけで物価目標を達成するためのハードルは依然として高そうだ。

平松 さわみ 東洋経済 記者

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ひらまつ さわみ / Sawami Hiramatsu

週刊東洋経済編集部、市場経済部記者を経て、企業情報部記者

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