次世代水素カー、“3分充填”のカラクリ 決め手はバルブ、国内最大手の技術力とは
そこへ、キッツは昨年7月、新開発の水素ステーション用バルブで切り込んだ。外資メーカーのバルブはニードルバルブという形状なのに対し、キッツの新製品はボールバルブ。ニードルバルブに比べて同圧力で10倍の水素を送り出せるため、水素充填にかかる時間をおよそ10分の1に短縮できる。さらに、価格を1個35万円と、外資メーカーの約半分に抑えた。すでに12年度に実証用水素ステーション4カ所に採用されるなど、導入が急速に広がっている。
キッツはもともとバルブでガス業界との付き合いがあり、エコカー関連ではバスやタクシーなどの燃料として使われる圧縮天然ガス(CNG)ステーション用のバルブを販売していた。その販路や技術的なノウハウを生かして、今回の水素ステーション用のバルブが生まれた。
全社プロジェクトで取り組む
キッツは水素ステーションとCNGステーション向けのバルブ事業を「CLESTEC PROJECT」と名付け、同社初めての全社プロジェクトに位置付けた。開発・設計はキッツ本体が手がけ、製造は半導体製造装置など精密なバルブを得意とするキッツエスシーティーと独子会社のペリンが行い、販売はこの3社が共同で行う。
キッツグループでは各社が独立独歩で歩んできたが、今後の拡大が予想されるエコカー分野においてはグループで連携。CLESTEC PROJECTリーダーの石原茂樹氏は「水素ステーション向けバルブで2015年に国内シェア50%を狙う。ドイツ、米国、韓国といった環境意識の高い国にも展開したい」と意気込む。数年後、エコカー向けのビジネスがキッツの新たな事業柱に育っているかもしれない。
※関連記事を4月15日(月)発売の週刊東洋経済4月20日号「クルマは日本を救えるか」に掲載しています
(撮影:尾形 文繁)
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