結構すごい、浦安市「少子化対策」の全貌 卵子凍結は施策の一部に過ぎない

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――これだけの政策があると知ると、浦安市に転入したいと思う家族もいると思います。まだ卵子凍結については取り組みを開始して1年ですが、20~30代の家族が増えて来るのではないでしょうか。

若干は、増えてくれるのではないかと思います。ただ、浦安市は賃貸も分譲も安いとは言えないので、浦安市内で育った人なのに、結婚した時に家賃が高いからと浦安市を離れて周辺の自治体に引っ越してしまう人も少なくない。これだけの支援があるのに、不妊治療や出産前後の行政サービスを体感する前に離れているのです。家賃は少し高くても、行政の支援や助成がある分だけお得だと理解してもらえたらと思っています。

浦安市は若い人が多い自治体だと言われています。日本全体の高齢化率が約26%なのに対して、浦安市の高齢化率は16.19%です。ただ、地域間格差が大きくて、42%の地区もあれば、2%の地区もあるというのが実情です。実は、去年3月末で1つの小学校が廃校になっているんです。ですから、少子化をなんとかしなければという危機感はあります。

少子化について、全国各地の首長さんはかなりの危機感を持っている。それなのに、国会議員の方にはその深刻さがなかなか伝わらない。人口増加で右肩上がりになる時代はもう来ないということを自覚しないといけません。

国の少子化対策にかけるおカネは少なすぎる

――国が少子化対策や教育にかける予算が少なすぎます。はたから見るとやる気を疑います。

本来は国がやって欲しい、国がやるべきではないのか、というのが本音ですね。ただ、国としても、どうしていいかわからないというのもあるのかもしれません。

厚生労働省から職員が聞きに来ることもありましたし、全国の首長たちと一緒に勉強会をやることもあります。内閣府や厚生労働省から全国で最も若く、元気な街から少子化対策の具体策を発信して欲しいと折あるごとに言われているんです。

その後、国が動きやすくなるように、少しでも浦安市からスタートできることがあればという気持ちは持っています。

安心して出産できる世の中にならないと少子化は止まらない。浦安市はそのお手伝いをしているだけだと思っています。

 

一歩先を行く浦安市の取り組みを、対象となる世代の女性たちはどう感じているのだろうか。今回、東洋経済オンラインが実施した卵子凍結に関するアンケートには、多くの女性から回答が集まった。
現在、不妊治療を続けている人たちや、未受精卵子の凍結保存を検討している女性たち、そして、必要ないと言い切る女性たちも。彼女たちの話を聞くことで今の社会が見えてきた。

 

(撮影:大澤誠)

藤村 美里 TVディレクター、ライター

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ふじむら みさと / Misato Fujimura

都立国分寺高校、早稲田大学卒業後、テレビ局入社。報道情報番組やドキュメンタリー番組でディレクターを務める。2008年に女児出産後、視点が180度変わり、児童虐待・保育問題・周産期医療・不妊医療などを母親の視点で取材。2013年に退社し、海外と東京を往復しながらフリーで仕事を続けている。Twitter @MisatoFujimura 

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