どん底のベネッセ、新社長には何を託すのか 3カ月で福原社長が退任、後任はファンド出身

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カーライルはこれまで22社の日本企業に投資してきている。投資先は中堅企業、分野は製造業やBtoBが多いが、居酒屋「はなの舞」などを展開するチムニー(2009年12月出資、2012年12月上場)や、「ベビースターラーメン」などで知られるおやつカンパニー(2014年5月出資、継続保有中)など、消費者に近い企業での実績もある。

安達氏は2003年~2008年、2009年~2015年、そして2016年6月から現在に至るまで、のべ11年間にわたって、ベネッセHDの社外取締役を務めている。今年7月からは社内で組織された「経営戦略委員会」の委員長も兼任している。

ファンド出身者に託された再建策

社外取締役からの社長就任は異例ともいえる。はたして安達氏は手腕を発揮できるのか(撮影:今井康一)

福原氏は「私が(野村証券から)ベネッセに入社したのは2004年だが、安達さんは2003年から。事業内容について熟知しており、ともに手を携えて(再建に)尽力してくれる」と話す。

今回の会見で、安達氏は「カーライルは経営者と一心同体に、ずっと支援をしてきたファンドだ」と強調する。

「私が(カーライル日本法人)トップになった13年前、ファンドと言えば“ハゲタカファンド”という印象が強かったが、彼らのような狩猟的なアプローチではなく、私は農耕的なアプローチで会社の再生を支え、成長させることをしてきた。教育産業は知見が蓄積され、客の信頼を得るまで時間がかかるベネッセは、農耕的なアプローチが適している」(同)。

安達氏は、これまで教育関連企業への投資を手がけたことはない。ただ、「私は教育者であった祖父に強い影響を受けている。ベネッセHDの社長は私のキャリアの締めくくりだと思っている。それが教育の分野であることに、大変強い思い入れがある」と安達氏は言う。安達氏の祖父は山梨大学の初代学長を務めた安達禎(ただし)氏だ。

原田氏が急いだ「進研ゼミ」のデジタル化について、安達氏は「まだ商品のニーズが作り上げられていなかった」とみる。業績の悪化についても、情報漏洩事件だけが主要因ではなく「顧客視点の事業展開を弱めた経営判断の問題」「顧客のターゲット化が曖昧であったために、ニーズに答えられなかった」(同)と分析する。

投資ファンドの日本法人代表として著名な安達氏だが、事業会社の経営手腕では未知数なところもある。10月31日に実施される2016年4~9月期(第2四半期)決算会見の場では、より具体的な戦略を示す方針だ。そのなかには「一番得意なところ」と豪語するM&Aも視野に入ってくるかも知れない。

振り返ってみれば、原田氏も2014年4月の就任会見で、教育事業の経営を人生の集大成と語っていた。半年余りで3人目となるトップは、迷走するベネッセHDを救うことができるのか。

平松 さわみ 東洋経済 記者

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ひらまつ さわみ / Sawami Hiramatsu

週刊東洋経済編集部、市場経済部記者を経て、企業情報部記者

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