特報!オンワードが売った銀座一等地の行方 買い手は"首都圏攻略"を期す、あの電鉄会社

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東京・秋葉原の商業施設「アキバ・トリム」。4階にはユニクロが入居する

阪急電鉄は不動産事業として梅田(大阪府)を中心とする阪急沿線エリアで、ショッピングセンターやレストラン街を手掛けている。東京都内でも、首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス(TX)の起点である秋葉原駅に直結する商業施設「アキバ・トリム」を保有する。現在、アキバ・トリムには、ユニクロ、無印良品などの衣類・雑貨ブランドのほか、築地すし好などの飲食店が入居する。

阪急電鉄が今回、銀座の土地を取得した狙いは、ずばり「首都圏展開の拡大」だ。

関西では多くの不動産事業を手掛けているものの、都内の大型商業施設は秋葉原の1つのみ。関西偏重では人口減少で事業が縮小していくおそれがあるため、人口流入の続く首都圏での展開を加速していきたいという事業戦略上の目論みがある。

阪急は銀座で商業ビル開発へ

阪急電鉄は銀座のこの地で「商業ビルの開発を検討している」という。商業テナントを誘致し、賃貸収入を得る計画だ。この土地のさらなる転売は考えていないという。

この地から数百メートル離れた銀座2丁目では今年7月、三菱商事都市開発が商業ビルをグランドオープンした。土地面積は333平方メートルでほぼ同じ。10階建てで、1~3階は米国を中心に展開する高級ファッションブランド「BCBGマックスアズリア」、4~10階は複数の東京初出店を含む高級飲食店が入居している。阪急電鉄もこれと同様に、高級ブランド店や東京初出店の高級飲食店を誘致するのではとみられる。

阪急電鉄の土地取得額は決して低くはない。1平方メートル当たりの単価は4370万円だ。国土交通省発表の2016年公示地価で最も高かった銀座4丁目「山野楽器銀座本店」の1平方メートル当たり4010万円を1割近く上回る。

これだけの投資額に見合う家賃収入を得られるテナントとなると、アキバ・トリムのような広い売り場面積を要する低価格ファッションブランドではなく、坪当たりの売り上げが大きく、高額の家賃を負担できる高級ブランド店になるとみられる。

阪急電鉄は「日本の一等地である銀座ということもあり、今回の取得は適正価格」と判断する。銀座の土地売買をウォッチしている不動産関係者からも、「日本銀行がマイナス金利政策を導入した2月以降、銀座の不動産価格は一段と上昇傾向にある」といった声が聞かれる。

4年後の東京五輪を控え、銀座では再開発が急ピッチで進む。オンワードが果たせなかった銀座での商業ビル開発を、阪急電鉄が実現しようとしている。

菊地 悠人 東洋経済 記者

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きくち ゆうと / Yuto Kikuchi

早稲田大学卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者を経て2017年10月から東洋経済オンライン編集部。2020年7月よりIT・ゲーム業界の担当記者に。

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