GAPが「オールドネイビー」を全店閉じるワケ 2017年1月末までに国内53店を閉鎖

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誤算の一つは「ユニクロ」を中心とした日本の低価格ファッション市場の特異性だ。日本では、ユニクロやその弟分の「GU」、さらに外資系の「H&M」や「ZARA」はじめ、ファストファッション勢がしのぎを削っている。

「GUとバッティングしたことが原因ではないか」と指摘するのはファッションコラムニストの大ナギ勝氏。日本ではユニクロが圧倒的優位にあり、その低価格ブランドのGUが勢力を伸ばしている。

価格帯がオールドネイビーとほぼ同じGUは、ユニクロ同様のベーシック路線ではなく、トレンドを重視したビジネスモデルに舵を切り成功を収めた。「最新のトレンド商品がユニクロの半額で買える」コンセプトが受け入れられ、若い女性向けにはガウチョパンツといったヒット商品を連発。ファーストリテイリングの会社計画を上回るペースで増収増益を続ける。

もう一つの誤算はGAPによる商品展開の読み違いだ。

GAPが日本に来た際に話題になったのが、親子での“おそろいコーデ”。胸元にGAPと大きくロゴがプリントされたパーカーやシャツが人気で、ファミリー向けに強さを見せつけたが、オールドネイビーでそうした人気は起きなかった。ユニクロ─GUのような連想買い需要につながらなかったのも一因だろう。

残るのはGAPとバナナリパブリック

日本市場であれば、日本人のフィット感やサイズ、トレンドに合わせ、一部で日本限定の品ぞろえをしなければならない。ユニクロやGUがつねに店舗で見直しを進め、他外資も商品サイクルを数週間で入れ替えるのが通常。オールドネイビーの場合、各国のニーズに合った品ぞろえをシーズン前に決定するため、シーズンに突入してからの軌道修正が難しく、スピード感でどうしても不利だった。

鳴り物入りで上陸したオールドネイビーの撤退。今後日本に残るのはGAPとバナナリパブリックの2ブランドになる。アート・ペックCEO(最高経営責任者)は「日本は両ブランドで200店以上展開し、重要な市場であることに変わりない。長年実績がありシェアを獲得できる可能性が十分ある」と説明する。

それでも、いったん他ブランドに離れていった日本の移り気な消費者を、再び呼び戻すのは容易ではない。GAPを取り巻く状況は厳しさを増していくばかりだ。

(撮影:梅谷秀司)

菊地 悠人 東洋経済 記者

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きくち ゆうと / Yuto Kikuchi

早稲田大学卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者を経て2017年10月から東洋経済オンライン編集部。2020年7月よりIT・ゲーム業界の担当記者に。

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