スバル「新型インプレッサ」が担う重大使命 歩行者保護エアバッグで"安全"にも価値あり
歩行者保護エアバッグの研究開始は10年前にさかのぼる。国内での交通事故死亡者数のうち半数を占めるのが歩行者や自転車であり、この割合は欧米に比べても抜きん出て高い。特に、車に引かれた歩行者がAピラー(フロントガラスを支える左右の支柱)にぶつかって死亡に至るケースが多い。そこで富士重は、Aピラーやフロントガラス下部といった固い部分への衝突から歩行者を守るエアバッグの研究を進めてきた。
新しい装備を加えれば、当然そのコストは車両価格に転嫁される。社内でも「国産車メーカー他社が搭載していないのに、なぜうちが歩行者保護エアバッグを先駆けてやるのか」と疑問の声が上がった。最終的に社内がまとまったのは、「(世界で初めて歩行者保護エアバッグを採用した)ボルボの半額以下で同等以上の性能を実現できたから」と古川寿也・スバル第一技術本部部長は言う。
歩行者保護エアバッグ以外にも乗員を保護する7つのエアバッグが全車標準装備される。さらに、旧モデルでは、前輪駆動車へのアイサイトの設定はなかったが、新型インプレッサからは前輪駆動車にも安全運転支援システム「アイサイト」が標準装備されることもこれまでとの違いだ。
車両価格は数十万円上乗せされる
ここで問題になるのが車両価格だ。エントリーモデルとなる排気量1.6リットル前輪駆動車の場合、旧モデルの車両価格は159万円だった。新型インプレッサでは、同モデルであっても、アイサイトや歩行者保護エアバッグなどの装備が標準搭載になることで、少なくとも旧型から数10万円上乗せされることが予想される。
たとえば、富士重がインプレッサの競合として挙げるマツダ「アクセラ」の最低車両価格は176万円で、旧型インプレッサならアクセラよりもお得感があったが、新型はアクセラと同等かそれ以上の価格になりそうだ。
ただ最廉価の価格を上げることで、150万円台を目安に購買を検討していた潜在顧客を失うというリスクが生じる。さらに、新装備を標準搭載にすることは、「装備はいらないから安いほうがいい」という顧客の選択肢を奪ってしまうことになる。それでも富士重が今回の決断を下したのは、「安全に対してプラスアルファのおカネを払う人を顧客ターゲットにする」という意思表示のあらわれともいえる。
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