マルちゃん正麺が大逆転できた「3つの改革」 衰退市場で起きた”革命”とは
理由2
小売りなど取引先に見せた「本気」
「マルちゃん正麺」のネーミングの由来は、「東洋水産の考える正しい麺」。「これこそが麺の王道だという自信を見せたかった」。パッケージは袋麺には珍しい金色を使用し、堂々とした風格を表現。パッケージ写真も野菜や卵などの具を隅によけ、麺を前面に出したものを採用した。
この新商品の発売に際して、東洋水産は小売り、卸など流通関係者を対象に、商品発表会を開催し、商品の展示と試食会も行った。
東洋水産はこれまで、大型の商品発表会を行ったことがなかった。だがこのときは、同社が高シェアを誇る北海道、東北エリアから、手薄な西日本、九州エリアまで全国7カ所で展開した。商品のコンセプトを十分に伝えるため、社員が司会を担当。東京で行った発表会には、小売り、卸など数百社が参加した。
メーカーから数多く出される新商品のうち、定番品として定着するのはほんの一握り。特に商品の改廃ペースが速いコンビニでは、売れなければ2カ月で棚から外される。メーカーは販促費を拠出して店頭での露出を増やすなど、小売りとの関係強化に腐心している。大型発表会で東洋水産が見せた「本気」は、小売りサイドとの協力体制をより強固にすることになった。
「マルちゃん正麺」は発売当初から品薄状態が続いている。そのため特売が少なく、店頭では5袋368円前後で売られることが多い。198円程度で売られる競合商品もある中、「高くても買いたい」というニーズを獲得した意義は大きい。
震災特需がなくなり、流通業界は大幅な値下げ合戦に突入している。小売りや卸のみならず、メーカーの収益も圧迫される状況が続く。客単価の底上げには、安売りしなくても売れるような付加価値を持った商品が必要不可欠だ。「マルちゃん正麺は高付加価値化で大成功した例」とライバルメーカーも舌を巻く。
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