「悲観論」にとらわれる人は絶対成功しない 出口治明×木暮太一の「白熱対談」
出口:1つが、「歳をとって定年に達したら、働けなくなる」。木暮さんのおっしゃる「いざ」というときは、だいたいが「定年後」なんですね。まだ20代なのに、60歳までにこれぐらいは貯めなければならないという強迫観念を植え付けられているんです。でも、これはあくまで定年制度の存続を前提にした話。60歳以降も働けると思ったら、その分いつまでもおカネが入ってくるので、今せっせと貯めなくてもいいという発想に切り替えることができます。
木暮:確かに。出口さんは、定年はなくなるとお考えですか?
出口:ええ、これは単純な話なんです。僕は団塊世代で、同級生はまだ200万人以上生き残っています。一方、今の新社会人は100万人程度。誰が計算しても、2030年にはおよそ800万人分の労働力が足りなくなるんですね。けれど、世論を見ていると800万人もの移民受け入れなんて簡単に実行されそうもない。つまり、定年制度がなくなるのは必然なんです。
政府も定年の延長には前向きですしね。そうした社会のなかで、若いみなさんが唯一気に懸けるものがあるとしたら健康でしょう。健康でなければ、働けませんから。
木暮:働き続ける自信のある人は、貯蓄に勤しむ必要はないと?
出口:ええ。かなり先の根拠のない不安に囚われるより、好きなものをたっぷり食べて、ぐっすり寝て、好きなことをしたほうがよっぽど健康になります。節約のためにおかずを一品減らすより、きちんと食べたほうが長生きできるはずですよ。だから、みなさんもちゃんとご飯は食べたほうがいいです。
木暮:それはそうですね。では、もう1つの神話は?
「年金の破綻」という神話
出口:「年金の破綻」です。これも、外国人に聞けば「日本人はえらい心配性だね」と言いますよ。なぜなら、年金の支払いは政府の仕事だからです。政府は年金が払えなくなったら増税することができますから、理論上、年金制度は破綻し得ないんです。それに、将来的に政府の年金制度に我慢ができなくなったら、選挙に行って政府を変えればいいだけの話でしょう? 民主主義はそれができる社会ですから。いずれも、所詮は神話です。根拠のある不安とは言えませんね。
木暮:でも、テレビや雑誌は年金が破綻すると煽りますし、ロボットやAI(人工知能)に職を奪われるという話もありますよね。これからどう働けばいいのか、若い人は不安を感じていると思うのですが。
出口:AIがどうなるか、誰にもわかりません。でも、歴史オタクの僕に言わせれば、産業革命はAI革命の比じゃなかったと思うんですよ。それまで人間がせっせと手作業で作っていたものを機械が作り出すようになったわけですからね。
では、産業革命が起こって失業者は増えたか? 確かに一時的には増えましたが、あっという間に高度成長によって雇用が生まれ、失業者を吸収していきました。産業革命から現代に至るまで、人間の仕事は増え続けてきたんです。そんな歴史から学ばないのは、もったいないことだと思いますね。