想定外の賠償・廃炉費用を誰が負担するのか 東電への追加支援をめぐり、政府が協議へ

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東電が2016年度第1四半期末時点で見積もっている原発事故被災者への要賠償額は、約6兆5600億円と、すでに新総特の前提である5兆4000億円を大きく上回る。その結果、除染費用の支払いを含む要支払い総額は7兆7700億円に達している。9兆円の交付国債枠に到達するのもそう遠くない。

これまで賠償費用については原賠機構法に基づき、東電を含む原子力事業会社11社からの一般負担金および東電からの特別負担金によって国からの資金交付額の回収を図るという枠組みが設けられてきた。11~15年度までの一般負担金総額は6713億円、特別負担金は1571億円に上っている。だが、要賠償額の一部しか支払いが進んでいないうえ、こうした財源捻出の仕組みについても今後、持続性が危うくなりつつあるという。

従来の枠組みに限界、新たな奉加帳も

「電力自由化が進み、小売り料金規制が廃止された場合、各電力事業者から一般負担金を徴収し続けられるのか」(政府関係者)という問題がある。現在でこそ、一般負担金については電気料金の算定原価に織り込まれ、確実に回収できるものの、完全自由化時には現在の仕組みがなくなると見られる。そうなると支援スキームそのものが不安定になる。

廃炉費用の確保も頭の痛い問題だ。2兆円までは東電の自助努力で用意できたとしても、それを上回る費用を誰がどのような仕組みに基づいて負担するのか、方向性が見えない。現時点ではいくら必要なのかも判然としない。

これまでの凍土遮水壁や廃炉作業用のロボット開発の費用については、エネルギー対策特別会計を原資とした研究開発費として事実上東電の支援に充てられてきたが、廃炉費用全体にこのような手法を拡大することは困難だと見られる。再生可能エネルギー発電促進賦課金と似た仕組みで電気料金に広く薄く載せる方法も考えられるが、実現は簡単ではない。

前出の柴田氏は「廃炉費用は現在の想定を大幅に上回るとみられることもあり、支援策の決定までに時間がかかる」と見る。

東電への追加支援は、安倍政権にとってもきわめて難解な問題だ。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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