日比谷線の新型車両は「ホームドア」仕様だ! 「音と光」が凄い!30年ぶりに今年度デビュー

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各車両に設けられたフリースペース

地下鉄といえば車内にはトンネルの中を走る走行音が響き、放送も聞こえづらいといったイメージがある中、13000系は「音」にもこだわった。放送が聞こえやすいよう、車内放送のスピーカーは実はステレオスピーカーになっており、ドアの部分に左右1台ずつ、計8台を設置しているほか、アンプなども含めて「特急車両でもなかなかないクオリティ」と松本さん。音質は非常に高いといい、「イベントなどでこのスピーカーを使って音楽を流そうといった話も出るくらい」(同社広報部報道担当課長・宗利英二さん)という。

また、騒音自体も従来の車両より減る見込みだ。銀座線の新型車両でも採用している、カーブに合わせて台車が舵を切る「片軸操舵台車」を採用することで、カーブで車輪と線路の摩擦によって発生する音を低減。新型台車の採用により、モーターの配置がこれまでの車両と変わったことで編成の重量バランスが良くなり、車両と車両の間のガクガクする揺れや騒音も減るという。

最大のおもてなしは「安全」

現在日比谷線を走る03系(左)と13000系。五輪の年には全車が13000系に置き換わる予定だ

「片軸操舵台車」の導入は、騒音や振動の低減だけでなく、安全性の向上にもつながっている。

日比谷線では今から16年前の2000年3月、中目黒駅(東京都目黒区)の構内で電車が脱線、対向電車と衝突し5人が死亡、64人が負傷する事故が発生した。国土交通省の事故調査委員会報告書は、脱線の要因について「比較的低速で走行中に車輪がレールに乗り上がって脱輪に至る、いわゆる『乗り上がり脱線』と考えられる」と述べている。今回の新車で採用した「片軸操舵台車」は、騒音や振動を抑えるだけでなく「低速での乗り上がり脱線に対する安全性も向上している」という。

ホーム上の安全に対する関心が高まりを見せる中、ホームドアの完備に向けて登場した新型車両。東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年度までには44編成が導入され、日比谷線の全車両が13000系に置き換わる予定だ。一見して気付かない部分にもこだわった「粋」な新型車両は、安全という鉄道にとって最大の「おもてなし」を提供する役割を担うことになる。

(写真は全て撮影:尾形文繋)

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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