生命保険選びの基本は「入らないこと」である 自動車保険と同じスタンスで決めよう

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まず、もっとも入る気になれないのが「医療保険」です。生命保険協会の統計を調べると、入院給付金の1件当たりの支払い実績は11万円程度、手術を伴う場合でも22万円程度だからです。それくらいのおカネを用意するのに、保険に入るのは賢明ではないでしょう。

また、がんの治療などにかかる費用も、本稿では詳述しませんが、複数の調査結果を確認すると、50万円程度で済むことが最も多くなっています。それくらいの貯蓄なら私にもあります。先進医療には300万円くらいの実費がかかるとしても、どのみち、あらゆる可能性に備えることは無理、と割り切ります。

葬儀代などを用意する「終身保険」も不要です。そもそも葬儀に100万円単位のおカネをかける気もありませんが、老後の死亡は不測の事態ではないので、保険をかける必然性を感じません。

現時点で判断できないものには入らない

介護保険に入らないのは、70代後半から役に立つことが多いだろうと認識しているからです。20年後以降にも有効だと思える保険を現時点で決める自信はありません。もちろん、他の保険同様、コストが開示されていない時点で気に入らないというのもあります。

そんなわけで、気になるのは、病気やケガで長期間働けなくなった時の収入を補てんする保険くらいです。とはいえ、こちらも詳しくは別の機会にしますが、給付金を受け取る確率は、死亡率より低いと見ています。なので、何事もなく過ごす日々にもおカネがかかることを重視し、保険加入はやめておくことにします。健康でありながら仕事が途絶える可能性も見逃せないからです。

仮に、私に自立していない子供がいたら、子供が成長するまで一定期間、死亡保障を持つ保険に入りたいと思います。大金を用意する必要があるからです。

会社員の方でも、基本的な考え方は私と同じで良いはずです。自営業者より健康保険の保障内容が厚いことなどを考慮すると、保険料負担は抑えられる可能性が高いでしょう。

「本当に必要な保険は何だろう」「今、入っている保険は、すべて必要なのだろうか」といった疑問がある向きは、ぜひ「自動車保険」の利用の仕方に倣っていただきたいと思います。

後田さんが「生命保険」をさまざまな角度から解説する連載を、この秋から開始する予定です。お楽しみに!

 

後田 亨 オフィスバトン「保険相談室」代表

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うしろだ とおる / Tooru Ushiroda

1959年、長崎県出身。長崎大学経済学部卒。1995年、アパレルメーカーから日本生命へ転職。営業職、複数の保険会社の商品を扱う代理店を経て2012年に独立。現在はオフィスバトン「保険相談室」代表として執筆やセミナー講師、個人向け有料相談を手掛ける。『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由』(青春出版社)ほか、著書・メディア掲載多数。

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