消費税還元セール禁止なら税額表示を明確に 150人の専門部隊率いる「税制のプロ」に聞く

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使い勝手よくない投資減税

――設備投資や研究開発費に関する減税もありますが、中小企業にとって恩恵はありますか。

政府には、「減税するから、もっと投資や開発をしてほしい」という狙いがあると思うが、使い勝手があまりよくない。例えば、研究開発税制では、法人税額の控除枠が3割に拡大されるものの、研究開発のための部署を独立してつくらなければ、税務署に申し込んでも認められない。それも他の部との兼務はダメ。大企業なら研究開発部も新設できるが、中小企業では生産部門の人間が開発も行っているわけで、人的に割ける余裕はないのだ。

また教育研修も研究開発費には認められなくなる。教育は社員のレベルを上げ、社内を一丸にする意味でも、こういうものは摘み取ってはいけない。そうした例も含め、制度を利用するのにも、様々な要件が多い。企業の活力を上げるため、使い勝手のいい税制で後押ししてほしい。

――14年4月から消費税率が現在の5%から8%に、15年10月には10%に上がります。自民党は増税分を確実に転嫁させようと、「消費税還元セール」を禁止する方針です。

大手スーパーが還元セールで値引きし、その負担を中小の納入業者が被る懸念があるのなら、やむをえないかもしれない。値引きしても、小売り・卸・メーカーみんなが泣く(負担する)なら別だが、卸やメーカーだけが泣くのでは……。一方で、還元セールをただ禁止するのも、消費者にとってプラスかどうか疑問だ。消費者に誤解を与えないよう、「消費税はこういう仕組みでみなさんに負担してもらっています」とアピールしたうえで、きちんと課税すればいいのではないか。

消費税の場合、モノを買う人に転嫁できなければ、中小の事業者は、自分の粗利を削らなければならない。価格表示にしても、内税方式では税額が見にくく、値引きのしわ寄せが下請けにいく。「1000円+税」のような外税方式を認めれば、消費者が自分の負担を確認できる。

――個人向けでは、相続税や贈与税を増税すると、富裕層が海外に脱出する恐れがありませんか。

確かに相続税が高いと、「海外に逃げたい」と思うような人は、出てくると思う。米国では資金さえあれば、永住権も割と簡単に取得できるため、実際に中国人などが行っている。基本的には、増税で日本人が日本から逃げないようにはどうすればいいか、考えなければならない。

もっとも、数億円くらいの相続税で、この四季のある、美しい日本を棄てて海外に行く選択をとる人が、どれだけいるだろうか。死んだらカネを墓に持って行けるわけではない。税金が高いのが嫌なら、家族に遺そうとはせず、生きているうちに全部自分で使ってしまえばいい。だいたい、子どもに大金をのこすと、子は働かないものです(苦笑)。

(撮影:尾形文繁)

大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。資産運用や相続、年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。大野和幸(X)

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