利益率22%!東横インは"非常識の塊"だった 創業家社長が語る「脱・値上げ」の行方

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ただ、東横インの歴史も順風満帆ではない。創業以来、右肩上がりで業績を伸ばしてきたが、2006年にはハートビル法違反で西田氏が社長を退任。そして2008年、今度は西田氏が廃棄物処理法違反で逮捕されてしまった。会社の不祥事にリーマンショックが重なり、一時期は業績がどん底まで落ち込んだ。

事件直後の2008年、経営の建て直しを期待されて、西田氏の長女である黒田氏が副社長に就任。2012年に社長業を引き継いだ。大学院修了後の2002年から2年ほど東横インで働いた時期があるとはいえ、まったくの専業主婦からトップへと転身。型破りさでは西田氏に負けず劣らずと言えるかもしれない。

世界に1045万室(トーヨコ)を作りたい

かつてワンマン経営の象徴のようにとみられた東横イン。現在は「特徴と言えば井戸端会議が多いこと」(黒田社長)という社風だという

2012年に黒田氏が社長に就任してからは、震災後の復興景気も追い風となり、業績は好転。過去最高を更新する水準が続いている。

2015年の5月2日〜3日にかけての24時間では、日本と韓国を合わせた全店249店、4.8万室が満室となり、「稼働率100%を達成した最大のホテルチェーン」として、ギネス世界記録にも正式に認定されている。

現在、同社は256店舗、約5万室を抱え、国内のホテル運営会社としては屈指の規模だ。今後は「30年で世界に50万室、いずれは1045(トーヨコ)万室」を目標に掲げています」(黒田社長)。

その布石となるのが海外への進出だ。2008年に韓国に1号店をオープン。現在韓国に7店舗、カンボジアに1店舗展開しているほか、2014年からはドイツ(フランクフルト)、フランス(マルセイユ)などでも建設を進めている。モンゴルやフィリピンにも開業する予定だ。

「2020年の東京オリンピックの後も、日本は『行ってみたい国』のひとつであり続けます。日本のマーケットに限界が来る前に、少しでも多く、海外に展開したいと考えています」(同)

家庭のようにいつも変わらない場所であり続ける。それが利用客の心をがっちり掴む、東横インのブランド戦略であり、強さの理由といえそうだ。果たしてワンプライス戦略は顧客の支持を集めることができるのか。

(撮影:尾形文繁)

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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